他が為の想い
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黄巾時代に兵同士って結構話してたんだぜ。まあ、徐晃隊だけかもしれねぇが……。話してみると俺達って曹操軍とそっくりだったんだ」
自分と同じ事を考えている人が秋斗の一番近い所にいたのだと気付き、雛里はその話に聞き入っていった。
「だからよ……鳳統様、劉備様が覇を唱えられないと判断したなら……助けてやってくれねぇか? もう矛盾に苦しむこの人を見たくねぇんだ。バカな俺達は御大将みたくなりたくて勉強して、ちょっとだけ分かっちまったんだよ。劉備様も正しいけど、御大将も正しい。それなら自分と同じ考えのとこに行けばいいんだ」
すっと、その場にいる全ての徐晃隊が頭を下げた。副長も同じように。
交渉次第で、雛里ならばどうにか出来る方法が一つだけある。このまま秋斗が気を失ったままであれば、それが為せるだろう。もしくは……雛里が無理やりに交渉で提案すれば行える可能性があった。
それに賭けているのは雛里も同じ。想いが通じてから、彼女はその方法を着々と積み上げて行っていた。
ずっと心にあったわだかまりが解けて行く。一人で考えていた事が誰かと同じだとこれほどまでに違うのだと。
何かを返そうとした雛里に向けて首を振った隊員の一人は、にやりと笑って口を開いた。
「答えてくれなくていいんでさ。俺らの想いを知ってくれたらそれでいい。御大将の未来の嫁さんの判断ならそれが正しいんだからよ」
「よ、よめっ……あわわ〜!」
瞬間、顔を真っ赤に茹で上げた雛里は一人の少女に戻っていた。
にやにやと、いつも通りのからかいの笑みを向け始めた徐晃隊。その場にいる皆が心に安息を感じていた。
その空気に当てられたように、ピクリと……秋斗の手が動いた。
「し、秋斗さんっ!?」
彼の顔を覗き込みながらの歓喜と不安が綯い交ぜになった声を聞いて、同じように皆も彼に近寄っていく。
「……っ……雛里……無事か?」
目を開いた秋斗はコクコクと頷く雛里の涙が溢れる瞳を受けて、すっと目を細めた。
「状況は?」
未だ戦場である為に彼は変わらず。しかしその瞳には安堵の色。雛里が生きている事を理解した為に。
雛里も間違わず、将としての問いかけには、グイと涙を拭って軍師として返す。
「包囲網を突破後、捨て奸にて徐晃隊の残存数は五十。橋を越えれば敵兵はいないと思われます」
「包囲網の突破については――」
「御大将」
訝しげに尋ねようとした秋斗を副長が遮った。その厳しい瞳を受けて、秋斗はゆっくりと痛む身体を起こしていく。
「あんたがなんだろうと、俺達の主はあんただけだ。生きてここに居る。それだけで十分だ。何も言わねぇし何も聞かねぇ」
副長は秋斗の心を気遣い、いつものように支える事を選んだ。
徐晃隊も、何も
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