他が為の想い
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晃隊はさらに士気を高めて行った。
幾多の剣と槍が交差する狭い戦場は笑顔に溢れていた。まるで街でじゃれあい、遊びあう子供のように。
その場にいる徐晃隊の皆は、一人でも多くの敵兵を屠りながら満足していた。
これで自分達の敗北は確定だが、最後に闘えるのがこの武将で良かったと。
†
休息を繰り返しながら、三百の徐晃隊を分けて進んできた道もあと少し。
現在は月光と徐晃隊達の疲れを癒す為に秋斗を降ろして休息を取っていた。
あと少しなのだ。半里ほど進んだ所に崖の道との境界線である川があり、架けられた橋を渡れば本隊との合流まで一本道。
挟撃と伏兵が無かったという事はこの道はバレておらず、どうにか間に合ったのだ。
心配そうに、秋斗の片手を握り、もう一方で頬を撫でる雛里は逃走中、ずっと休んでいなかった。服は汚れ、髪は乱れ、トレードマークの帽子はひしゃげている。
秋斗は、徐晃隊の服を包帯代わりに応急処置を取りはしたものの、身体についた傷の数は尋常では無く、このまま放置すれば危ないのが誰の目にも明らかであった。
副長以下の徐晃隊はまだマシであった。死んでいった仲間に守られたという証拠でもある。
残りの徐晃隊の数は……皮肉な事に秋斗の予想通り五十。そして次に残るとすれば二十まで減らす。
「鳳統様、なんで松明を集めたんで?」
ふいと、疑問に思っていた事を尋ねた副長。それを受けて雛里は、
「追撃をこれ以上行わせないように橋を焼き落とします。そうすれば敵軍は大きく回り道をしなければならないのでもう追ってこれないでしょう。橋に残る兵は三十。敵が間に合えば……橋の上で残ってください」
足止めの為に橋を焼切るまで残れ、それが最後に切り捨てられる尻尾の役目であった。橋の上という限定された状況で戦えば数が不利でも多くの時間が稼げる為に。
不敵に笑い、徐晃隊の面々は互いに顔を見合わせる。なんの事はない、随分と楽しい仕事だとでも言うように。
今、此処に残っているのは黄巾時代から追随してきた古い兵達。
副長を筆頭に置く幽州組の十五人は最古参、そして黄巾に出立する時に加わったのが残りであり、誰よりも彼に近しいモノ達。
「なぁ、御大将。あんたの所で戦えりゃあ、俺達は幸せなんだぜ」
ぽつりと、最古参の一人が未だ眠り続ける秋斗に零した。
「だからもう……そんなになってまで劉備軍にいなくていいんだ。天の御使いは好きに生きるべきだ」
茫然と……雛里はその兵を見上げる。天の御使い、という言葉に疑問を感じながらも。
その一人は、黄巾の時に自らの手で仲間を殺せと命じられた兵士。彼がどのような存在で、何に一番近いかを知っている兵士だった。
「鳳統様、御大将は曹操殿と同じなのさ。
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