他が為の想い
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ずつで間断なく槍を突きだして牽制していた。決死で飛び出すモノがいれば、二人が突き殺し、すぐさま戻る。その繰り返し。
ただの兵ではあの統率には勝てる訳がない。まず間違いなく、個人武力の高いモノでなければ不可能なのだ。
そう判断して自身が突撃を仕掛けようと考え始めた時、森の中から高い笛の音がなった。
瞬間、列を為していたモノ達が雄叫びを上げて……猪々子に向けて槍を投げた。
十を超える槍が正確に飛んでくるなど、猪々子にしては初めての経験……しかし、彼女は理を以って戦う武人では無く、感覚で戦うモノである為に、大剣を振りながら馬から転げ降りる事でどうにか弾き、躱せた。
ただ、予想外であったのがその後である。
森の中から、十名の徐晃隊が飛び出し、彼女に向かったのだ。
重量武器である猪々子の得物では徐晃隊の素早い包囲連携と戦うには不安が残った。だから彼女は……
「どぉぅりゃぁぁぁ!」
大地に己が大剣を叩きつけ、その衝撃で土を弾き飛ばし、一瞬の間を作った。
徐晃隊の武将対策は一つ。秋斗と戦闘を重ねる事。
何人なら彼を抑え込めるか、練兵を繰り返して積み上げていたのはそれだけであった。重量武器相手は初めてであり、如何な徐晃隊であろうと不可測の動きには即時対応が遅れる。
その隙をついて、猪々子は袁紹軍の行き詰っている場所へと駆け抜けた。
「お前らは腰抜けか! 敵だって必死で戦ってんだ! 何怯えてやがる! あたいが来たんだからもう怖がる必要もないだろ? さあ、バケモン退治だ。派手にやろうぜ?」
大きな声を張り上げての鼓舞は瞬時に烏合の衆と化していたモノを兵士へと呼び戻す。
将とは旗。付き従うモノ達の指標となる存在。たった一人の行動と声によって袁紹軍のモノ達はしっかりとした軍に戻った。
そして、徐晃隊の空気も変わる。狩るだけの獲物では無く、戦って止めるべき敵に変わったのだから当然。
カチリと、彼らの中でスイッチが切り替わっていた。
「攻撃主体、決死突撃! 目標、一人十人だぜ野郎ども!」
小隊長の声を聞いて楽しそうに、彼らは袁紹軍の塊へと突っ込んで行った。先の戦闘も、逃走による疲労も感じさせない程に爛々と目を輝かせて。
またか、と猪々子は感じた。そして彼女も……飛び切りの笑顔を向ける。
「はっはー! そうこなくっちゃな! ちまちましたのはごめんだ! 命を賭けて向かってきな! あたいは文醜! 袁紹様が一の臣の文醜だ! お前らのかっちょいい生き様に敬意を表して、あたいの剣で地獄に送ってやるぜ!」
異常な突撃も、異様な死に様も、彼女にとってはかっちょいいで済ませられるモノ。だからこそ袁紹軍の兵は安堵し、それと戦う覚悟を持って行く。
そしてその誇り高い女武将を俺達が倒したいと、徐
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