第一部 学園都市篇
第1章 虚空爆破事件
七月十八日:『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』
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爪の如き掌を置いたままで、擦れ違う。
刹那、運転手がびくりと震えた。震えて振り返り――――
「が、ア――――ひ、ぎ」
断末魔を上げたその顔が、急速に老い、朽ち果て――最後には灰色の砂と化して路上に堆く積もる。
そこに火の消えた葉巻を投げ、紳士は運転席に回った。残る砂、転がった葉巻の跡。
「私が運転しよう。さあ、乗りたまえ」
言いつつ手袋を嵌め直し、紳士はドアを閉める。後に残された双子は、目を見合わせて。
「幾ら年若いとはいえ、流石に『アウトサイダー』の契約者か……」
「いや〜、やっぱりあんまりからかわない方がいいよね〜」
等と語らうと、迷わず車に乗り込んだ。静かな回転音と共に、リムジンが走り出す。路上に積もった砂は、吹き抜けた初夏の風に吹き散らされて消えていった。
ぎこちなく左ハンドルを操る紳士、その脇の歩道を――――緑色の腕章を着けた三人組の男女が歩いていた。
………………
…………
……
「っは〜、暑いなぁ」
「はふ〜、熱いですねぇ」
「貴方達、余り暑い暑い言わないで下さいますの? 聞いていると余計に暑くなりますの」
黒塗りのリムジンが走り抜けた、まだまだ厳しい日差しの降り注ぐ路上を歩く、嚆矢と飾利、黒子の三人。
一応は嚆矢が所属年数が一番長い為、班長的な立ち位置になっている。一番強いのは、間違いなく黒子だが。
「いや、そうは言っても白井ちゃん……寒さは着れば凌げるけども、暑さは脱ぐのに限度があるだろ? だから、春より秋が好きなんだよ、俺」
「知りませんわよ、全く……」
因みに嚆矢は肩紐の付いたアタッシュケースを右肩に、左手には強化アクリル材らしき楯を持っている。
見るからに、重武装。と言うのも、現在当たっている事件の所為である。
その装備の重みを感じながら、嚆矢はポツリと。
「超能力名『量子変速』を用いた爆弾魔――通称『虚空爆破事件』、か……」
実に、心から面倒くさそうに呟いた。
『虚空爆破事件』。七月の初頭から立て続けに発生している、『アルミニウムを爆弾とする』爆破事件。
しかも縫いぐるみや玩具にスプーンを仕込んだり、ゴミ箱のアルミ缶を起爆させたりと、辺り構わず被害を及ぼす実に厄介な事件である。
「一週間くらい前から連日被害が出てる事件ですからね……けほっ、昨日も、固法さん達が対応したから最小限の被害に抑えられたみたいですけど、けほ、風紀委員の男子生徒が一人、女生徒を庇って負傷したそうです」
「あぁ、中々見上げた同僚だよな。尊敬するよ、俺なんて口ばっかりだから」
と、率直
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