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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第1章 虚空爆破事件
七月十八日:『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』
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か重大な事に気付いたように紳士を見て――――紳士の灰色の眼差しを見るや人事不省に陥ったような表情となり、ケラケラ笑いながら何処かに歩き去っていった。

「ふん……狩猟民族である我々とは、根本的に別物であると言うわけか。脆弱にも程がある、コレばかりの狂気に耐えられぬとはな。本当に、こんな温い場所に我らの『(ロード)』となる才覚が眠っておるのか?」

 辟易したように呟き、葉巻を銜えようとした紳士。その葉巻の尖端の炎を、一条の水が抉るように撃ち抜いた。
 そしてその指先は、同時に『路上禁煙』の看板も指し示していた。

無問題(モウマンタイ)、あの方の目測に誤りなど有り得ないわ。それにしても、今の魔術にも完全に無反応とは……危機意識の無いことですわ」
「仕方無いよ〜。だって一世紀近くもの間、戦争と無縁の国だよ、お姉ちゃん〜?」

 と、紳士の葉巻に指先を向けた……彼を挟んで反対側の怜悧な蒼い髪の、色以外に紅い少女とパーツは変わらない双子の姉、眼鏡のチャイナドレスの少女は声で嘲笑う。事実、『虚空から炎の塊が現れた』り『指先から水が吹き出した』というのに、辺りの人々は誰も気にしていない。
 まるで『見慣れた光景だ』とでも言わんばかりに。

「君達の容姿のせいだ。この都市では、子供は超能力を使えるものだそうだからな」
「失敬な〜。子供は君だろ、この老頭児(ロートル)〜」
「ごちゃごちゃと煩いのですわよ、貴方達は……しかし、暑いですわね。これが『夏』ですか。湿度が高いのは問題ないのですが……日光が厳しいですわ」
「私、暑いの大好きだもんね〜。魚座の口(フォーマルハウト)は、もっと熱いしね〜」
「地球ならば気化するだろう、彼処の熱は……」

 と、その時、目の前に黒塗りのリムジンが停まった。直ぐ様運転席のドアが開き、現れたドライバーが三人に頭を下げた。

「お待たせ致しました、信号機がいきなり不具合を起こしたとかで遅れまして……どうぞ」
「おお〜、待った待った〜。次はないぞ〜?」

 雇われたらしき運転手は、大して反省などしていない様子で宣った。それに、気にしていない様子で答えたのは、サリーの娘のみ。
 チャイナの娘は反応すらなく乗り込もうとし、紳士は――その右手の手袋を、(おもむろ)に外した。

「「――――――!」」

 たったそれだけの事に、両脇の少女達は冷や汗と共に左右に跳ね飛んだ。その、()()()()()()から逃げるように。
 それを一顧だにもせず、紳士は某かを呟いて、労うようにその右手を運転手の()()に置いた。

「――クビだ、役立たずめ。この私から『時』を奪うなど、身の程を弁えよ……消え失せい!」

 その、老いさらばえた鈎
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