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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第1章 虚空爆破事件
七月十八日:『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』
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アルから貰った、冊子くらいのサイズの『錬金術の教本』を。

――ニアルさん曰く『ラテン語』だから難しいかと思ったが、流し読みした限りではどうも大部分でルーンが使われていた。寧ろ、肝心な部分はルーンが主体だった。これなら、予想よりも早く解読できるかもしれない。
 てか、錬金術は殆ど出てきてないんだが……いや、秘奥なんてもんが分かりやすい筈はない。精進が足りないんだ、きっと。

 ペラペラと本を捲り、あるページで止める。そこには、何かしらの召喚を扱った文言が並んでいた。
 それを彼は、実に致命的にも、全く持って不用心に。

「何々……『 Tibi Magnum Innominandum,signa stellarum nigrarum et bufaniformis Sadoquae sigillum(ティビ・マグナム・インノミナンドゥム・シグナ・ステラルム・ニグラルム・エト・ブファニフォルミス・サドクァエ・シギラム )』……か」

 (そらん)じた。諳じてしまった。その瞬間、辺りの気温がグッと下がり、あんなにも喧しかった蝉達が一斉に。まるで、息を潜めるかのように黙りこんだ。

 そして唐突に、誰も居ないと言うのに耳の真横でクスクスと笑い声。その刹那、何の前兆もなく生温い風が吹き抜けた。
 バサバサと、吹き飛ばされた紙が立てる音を孕んだ、思わず冊子を持つ腕で目を庇って閉じてしまうくらいの颶風が。

「――――な」

 そして、戦慄する。先程まで空いていた――目を庇った右腕の掌に、先程までの冊子とは比べ物にならないほど重厚な、鉄の表紙の本が握られていた。

「何だ、これ――――!」

 その禍々しさ、邪悪さ。鉄の筈なのに息衝きのたうつ軟体動物のような、不快なまでにぶよぶよとして感じられる装丁。
 触れているだけでも精神が削られていくような、気の触れそうな圧倒的な冷たさだった。

「『妖蛆の秘密(デ・ウェルミス・ミステリィス)』……しかも、原本だね。どこで手に入れたの、そんな稀覯(激ヤバ)魔導書(グリモワール)?」
「はっ?」

 真正面から掛かった声に、漸く頭が働き始めた嚆矢が目を向ける。
 見れば、小学生くらいの女の子。白い修道服に身を包んだ、青い髪の修道女が立っていた。

 まず目を引いたのは、その服装。宗教色の薄いこの学園都市ではあまり見ない、十字教の修道服。しかも白という、普通とは真逆の色。
 そして、浮世離れしたその髪の色だ。それは、嚆矢の好きな青空の色。欲を言えば、もう少し深みのある藍色なら完璧だった。

「『妖蛆の秘密(デ・ウェルミス・ミステリィス)』……って?」
「1500年代ドイツで出版された、フランドル出身の怪人……錬金術師、降霊術師、魔術師で、第九回十字軍の生
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