瀬戸際タイムマシーン
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果実のジリジリ。かわいい女の子。それを取り巻く男の子。おしゃれな服。行為ではなくエネルギーの優劣としての排他を感じたものであった。己を信じて疑わなかった日々に真実のマイノリティーを見つけてしまいそうだ。
私、小村の人生は間違っていたのか? 男にありがちな「小さな劣等感」を「大きな権力」でねじ伏せてやる、的な感じで生きてきてしまった。今、手に入れたのはアンドロイド小村と孤独である。
私、小村は中野ブロードウェイにいる。サブカルチャーを支えるショッピングモールである。昼間に行けばフィギュアやマンガに埋もれることが出来る。夜十二時を回り店は閉まっている。人通りは少ない。それにつながるアーケード商店街サンモールにはストリートライブに幾人かの観衆が集まっている。路地をのぞけばニュークラブの呼び込みが見える。
男とは二十四時ぴったりに待ち合わせしている。周りを見渡すがそれらしい男がいない。相手には自分の特徴を知らせておいた。無精ひげとノンフレームの眼鏡。ピンクのポロシャツである。
ストリートライブの歌声が響く。
今日の雨は
強く降ってフォギー
街を白く包んで
濡れる靴もそのまま
生きてるだけましだろ
なんだかひどいイジメみたい
僕はぬれて
君は乾いてCOOL
バスタオル白くくるんで
君の言葉を待つのみ
アレ返してくれません
アレだけでわかるでしょ
僕のシャツは君の部屋に
張りぼてみたいに飾られていて
エアコンの空気が僕の代わりに
彼を膨らます
今日の夜は
強く握って shake it
階段白くにごって
つまずいた弾み全力疾走
少し貸してくれないか
疲れに似た透明な冷静
「恥ずかしいんだ君の前じゃ」
僕のシャツは君の部屋に
張りぼてみたいに飾られていて
エアコンの空気が僕の代わりに
彼を膨らます ♪
今日の東京の雨は強く、アスファルトを叩くその粒は白く煙った。確かに「フォギー」だ。霧雨が降らなくなって久しい。暖かい都会の空気に逆らうように落ちてきた雨粒は大きく育っている。研究所には届かなかった都会の匂いが溶け込んだ雨。湿気でピンクのポロシャツが重い。軽く挨拶をしてきた目の前の男の話が聞き取りにくい。東南アジア系の顔をしている。「ゴハツ、ゴハツ、ハチゴー」といっている。七万八千円と聞いていたのでぴったり用意した。それ以上は持ち歩かない。目の前の男が「ハチゴー」と指を立てて繰り返す。「ハチゴー」。無理やり七万八千円をくしゃくしゃにして渡して、「リーブ・メー・アローン」と繰り返して背中を向けた
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