瀬戸際タイムマシーン
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したら」
「だとしたら? 何?」
「君の本来守るべき領域に誰かが風を吹かしているんじゃないかな? それで今君の意識はその風に揺らぐほど不安定になってるんじゃないかって」
「悪い風かしら?」
「分からない」
「揺らぐのはいけないかしら?」
「僕は不用意に揺らぎたくない」女は常に揺らいでいるから・・・なんて儚い詩人の言葉が頭をよぎる。夫の指をいじりながら妻はその指を見つめている。
「セックスしたいぃ?」
「したい」
「すごく濡れているので入りやすいと思いますけどぉー♪」妻「ナニガシ」は夫「何某」の手を導く。
風は全ての人に平等に吹く。それぞれの人のツボを心得ながら、快楽と苦痛を運ぶ。
小村が見た夢
東京に住む青年Cは出会い系サイトで写真入のメールをもらう。何回かやりとりの後、会う約束をする。時間を過ぎても彼女は現れない。もちろんネカマ相手にメールを打っていたのだ。七日が過ぎる。青年Cはレンタルビデオ屋のアダルトコーナーの暖簾をくぐる。写真の娘がAV女優のパッケージそのままだ。「ホホウ」と合点し、それを借りて一週間ゆっくりとマスターベーションをする。
その時、東京に住むAV嬢「ナニガシ」の孤独が終わる。舞台に一人で立ち、赤いビロードの幕が下りると言う類の終わり方ではない。そんなものでは膜の向こうでも彼女は孤独じゃないか。安らかに幸せへと歩み始める事ができるようになったのだ。
それまでの彼女は、外見から孤独は見受けられなかった。彼女自身も孤独であることを知らなかったようだった。本人に意識されることなく、孤独は彼女の背中に張り付き、行き交う人々は彼女の孤独に唾を吐いていた。生まれつき孤独と「非」孤独感を同時に内包できるタイプだったのだ。
そして彼女の手をとったのは「非」青年Cである。それが、その男が青年Cである確立は「青年Cが十年前に生まれていれば第二次世界大戦は無かったのに!」と言われるくらいのものである。全くそのぐらいの確立である。
青年Cがテレビ画面でAV嬢「ナニガシ」を見つめる間に、「ナニガシ」の孤独が終わったのだけは確かだった。
ある教室でホワイトボードに中年の男が書きなぐる。
1、AV嬢「ナニガシ」は 妻「ナニガシ」 と別人である。
2、妻「ナニガシ」は元AV嬢ではない。
3、AV嬢「ナニガシ」は空想の人物ではない。
4、アンドロイド小村の創った結晶はあらゆる人間の根底に流れる基本的感情を含んでいる場合がある。
5、青年Cのマスターベーションはその他大勢のそれと変わりがあるのかは分からない。また、それがAV嬢「ナニガシ」の孤独の終わりと時間的に同じであったのだけ確かである。
6、青年Cが実際にAV嬢とSEXする確立は低いが、青年Cが青年Cとして生まれたのは奇跡的な確立である。
7、
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