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瀬戸際タイムマシーン
瀬戸際タイムマシーン
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ず知らずの女の子に声ぐらいかけられるのだ。脊髄に走るどす黒い電気を我慢しながら女の子を見る。女の子はものすごく律儀にまっすぐ目を見て答えてくれる。近くの地下鉄の駅から乗り継ぎで山手線に出られるらしい。JR線は日にちが変わっても動いている。すごく便利だ。彼女の口角がきれいに上がっている。「これ以上入ってこないで」と言われているように見える。総ての仕草なんて裏に意味ありと見えたら終わりだ。その裏にはきっと・・・と思うと大抵終わりなのだ。
小村は大抵終わりの道を歩く。終わりに向かう道筋が身に染みて日差しを避ける癖がついたのだ。
 イメージも思考も言葉も全て、小村の持つもの全てが現実をすり抜けるように夜に消えていった。
 

  研究室

その夜、私は独り研究室にこもってソファに寝そべり、仮眠用の毛布を二枚重ねて丸め、抱きしめながら腰を振った。柔らかくもいきり立ったペニスに伸びきった包皮が優しく伸縮する。クミコがこうしてくれるなんていう期待は、もうしていない。その存在は性的なものの象徴として過去に留まっている。
「うん成功だ」私は射精の後、部屋の隅に置かれたメディカルチェアーに座る。パンツはそのままだ。研究室の蛍光灯はコンクリートの壁を照らし、緑がかった印象を与える。色気の無い照明を下に、かつてのクミコを想い、描き、それが自由に馳せる。三十過ぎのクミコの磨かれたふくらはぎを思った。彼女の体やらなにやらは理系にどっぷりと浸かった理知的な宇宙に包まれて、男の侵入を拒んで私に凝視を要求する。夏の暑い日にだけ拝めるストッキングを剥いだつやのあるすねや、絞まったふくらはぎには股間のたぎりが否めなかった。私はまたもよおした。再びソファで用を足す。「フー」とため息をつき椅子に座りなおした。

 ヘルメット 被る 男 一人 股間 萎えた 恋心 強い電磁波 垂れ流す それを好しとしない男が ヘルメットを 被るの♪
 吸い上げる ケーブル 光 デジタルの心 アンドロイドにためて その青い記憶 結晶に残すの♪

 小村が被るヘルメットから信号が送られる。一定のリズムを刻んでテクテクテクテク・・・・送られる。思い出す感覚。たぎる情熱。性的欲求から成される妄想。青い光になり光ケーブルを走る。隣に座った鉄の「アンドロイド小村」が全てを受け入れてくれる。許してくれるってわけじゃない。ただ吸い込んでくれる。それを彼の中で反芻し、言葉の持つ結晶力に頼り、確たる過去に追いやることを生業とする。この世の中に垂れ流されるべきではない欲情を、小村の脳の彼処に探し回り、現実に終止符を討つべくその唇から非現実を物語り、結晶にしてくれる。小村は何度か股間を握りそうになる。
 アンドロイド小村に『私』が充満するのを確認して、私は席を立った。「アンドロイド小村」の頭頂に刺さるクリスタルな管
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