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瀬戸際タイムマシーン
瀬戸際タイムマシーン
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体が辿り着いたからなのです。彼らは自分が『魔法使いになった事』を知りません。彼らは『魔法使いに近い職業』を選び始めます。『ミュージシャン・作家・弁護士』それらの・・・」
   「すいません弁護士が魔法使い?」とても誠実な表情を見せて「カウンセラー」が言った。
   「もちろん!人の心を自分の中で理解しなきゃならない。別人格の幽体がたすけてくれるのですよ。これらの職業は全てそうだ。しかしね、辿り着いた先で魔法使いになれなかった子に地獄が待っているんですよ。その可能性はあったのに成就できなかった人。その人に地獄が待っているのですよ。幽体は彼の中から幸せの種を全て奪い取ります。そしてその種を彼のごく近い友人関係に配りまわるのです。幸せの種をもらったものは幸せを、享楽的な幸せをむさぼっていきます。元々彼にあった彼に享受されるべき幸せです。それを見て幽体は実体を持ち始めます。孤独な彼の中で膨らむ劣等感に比例して実体化していきます。そして聞いてください。この街にはなんと実体化したものが数千もいると言う事ですよ。そして神様はこういいました。あなたは掃除屋だと。あなたは全ての悪魔を・・・・・。ここで神は姿を隠しました」

   カウンセラーは固いコンクリートの家に帰って思う。
  「幽体は・・・・あそこの使いじゃなかったか・・・・・」

アンドロイド小村はこれだけを語ると、ゆっくりとその目を閉じた。

 瀬戸内要次はその隣に座っている。ゆっくりと目を開けてアンドロイド小村を見る。
「ア・バオ・ア・クゥ」と言う。「ア・バオ・ア・クゥー?」

 パイプ椅子に座った小村が丁寧に礼を言い研究所に横付けされたスッテップワゴンのハイヤーまで瀬戸内を送る。ハイヤーの前には三人の白衣のスタッフが待っている。瀬戸内は両脇を抱えられて後部座席に、白衣の男に挟まれるように乗り込む。その表情には曇りがない。肌が白く白髪が多いだけで一見は健全な男に見える。実際健全なのでは? 健全でないのは彼を取り巻く何かではないか? それとも健全でない何かの対比として健全に見えるのでは? 彼自体は透明な存在では? 小村は色々と考える。


  「小村 文」と「小林 賢次郎」

 応接間にイタリア製の黄色いソファがある。その二人掛けの真中に賢次郎がロングピースを吹かしながら座っている。テーブルの灰皿には吸殻が2本と少なめだった。ペットボトルのジンジャーエールが三分の二程飲み干されている。健次郎の顔はよく日焼けしているが口元が白い。額がやけに褐色に輝いている。
「何かわかりましたか」小村が聞いた。
「何がとは?」
「彼のことです」
 賢次郎は「ウーン」と考えるフリをして「無い。分からないと言ったほうが適当だ」と答えた。
「彼の事を理解したいのでは?」小村は賢次郎が「理解」と言
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