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瀬戸際タイムマシーン
瀬戸際タイムマシーン
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「瀬戸際タイムマシーン」
           シモヤマ p‐53














はじまりの歌

 冬の鉛色の空みたいに 分厚いコンクリートの中 森の中で出会った僕ら 孤独に咲いた花と秘密 そよ風に吹かれて 君が言う 星に願いを 消してくれ 甘い声 その記憶 その気持ち その気持ちの記憶 言葉になる前に消して ゆらぎに揺らぐだけの世界へ 愛情と性愛 邪魔になるのはわかっているから 布団に抱きつき 枕に顔をうずめる いつかこの気持ちもこの人形に埋め込んでもろともプレス  白痴のようなきれいな世界 それを目指しているんだ 世界を救うのは何も愛じゃない これが愛ならどこに行けばいい 全ての愛しさと悲しい記憶を消してしまう そんな機械を創るのさ 俺が生み出す世間に垂れ流してしまう苦痛を それでせき止めるのさ 俺はかっこいいのさ♪ そうかっこいいのさ♪♪


結婚式

 銃が撃ち鳴らされる。花びらが舞い散る。教会の鐘が鳴る。はじける笑顔達。私が思っていたよりも戸惑いがない。周りの人間にだ。ごく当たり前のように祝う。笑う。握手をする。まるで何度もこんな傷心は経験してきましたよってな具合に。傷心じゃない? いや傷心だろ。
別にそれほどいい女じゃないのかな、この人は。
私には。理解できない。することが出来ない。その回路が欠落している。または、世間で言うコンプレックスをいたずらに刺激されているだけなのだろうか。ひざまずいて足首を捕まえたい。私の場合はクミコを否定する言葉が脳裏に浮かんでも乾いた音がするだけで心の芯に響かないことになっている。
私は「クミコ」と心で思い「セックス」が頭の中からかき消される。「セックス」と心で思い「クミコ」に羞恥をおぼえる。私は完全にやられているのだ。
脇から嫌なにおいが立ち込める。「フアー」っと排気ガスのように臭いが立つ。全く俺はこんなんだから。バカだな。
季節はめぐり望んでもいないのに春が来る。誰から愛でられることのない春の想い。私にだけ不可能に見えるこの現実の理解。クミコが他人の奥さんになる。まだ自分に可能性があるうちにこの男に抱かれるのを想像するのは苦痛だ。これで和らぐ? あまりにも私が女に縁がないせいだ。もうそれが人生だといっていいぐらい。
齢四十八、まだ捨てきれない。何もかも。そんな訳で私の笑顔は引きつる。情けない。クミコに何かしらの同情を感じてほしいとさえ思う惨めさ。全てを殺したふりをして私は二人から目を背けた。
皆からはぐれることも出来ない。溶け込むことも出来ない。よく膝が笑う。怖いとかそういうことではない。理由がないため息をする。風の匂いをかぐ。誰かがブーケを取ってはしゃいでいる。何でそんなに拍手をする
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