暗雲は天を翳らせ
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到着した劉備軍の本城の様子を聞いて、明は度肝を抜かれていた。少しくらいの抵抗はあるだろうと予想していたのだ。だというのに、
「な、なんで城門が開け放たれてるわけ?」
先に向かわせた兵の報告では城門が開き、確認してきた中の様子は平常時の街と変わらない。いや、平常時というよりもっと酷い。民の活気に満ちる空気が溢れ、祭りの最中のようであったとの事。
すっと目を細めた夕は思考に潜ることなく、
「明、これは空城計。何か策があると思わせて時間を潰させたり撤退させたりする為の策。中に居たとしても少ないのが分かってるから問題ない。それに民の被害が増えるから、大徳の名を貶めない為にこの状態での抵抗は有り得ない。やっぱり秋兄は既に此処にいないという証明でもある」
つらつらと平坦に説明を行った。少しの落胆に声のトーンを落としながら。
秋斗がまた自身の予想だに出来ない手を打ってくるのではないか、と夕は期待していたのだ。
落ち込む夕とは対照的に、明は中の様子まで思考を向けて少しだけ焦っていた。
「あのさぁ……祭りって国がお金使うよね。国庫のお金は当然、もしかしたら糧食も、酒蔵の酒も解放してるんじゃないかな? 下手したら武器とかもバラして流しちゃってるんじゃない?」
明からの指摘に目を見開いた夕は、ぶるりと身体を震えさせて思考に潜り始めた。
明の言う通り、祭りは国の予算を使って行われるモノである。民の生活に活気を与え、金銭の大きな動きを齎す事の出来るイベントであり、成功すれば多くの税を治めて貰い国が潤い、商いによって民達も潤うモノ。
しかし、主がいないにも関わらず行われるなど前代未聞。軍が安全を守る為に見まわる事も出来ない中で行われると、民さえも危険にさらされるやもしれないというのに。
抵抗の後に手に入れたとしても国の現状を確かめる為には時間が掛かる。如何な天才であろうと身体は一つなのだ。通常の状態でさえ、劉備軍の文官達の手綱を握らなければ後々まで響いてくる。
つまり、ただでさえ侵略を行った後に街を治める事は面倒であるというのに、祭り後の管理まで押し付けられたと言う事。
当然、暮らしている民には自分達が攻めてきたとの話が出回っている。自分達が来なければ安全に楽しく過ごせていた事は間違いないのだから、介入して早期に終わらせるか、向こうの思惑に乗っかって祭りを成功させるかの二択を迫られている。
城を無視して関わらないという選択肢もあるにはあるが、もし敵がまだ中に潜んでいて後背から奇襲でも仕掛けられようモノなら被害が増える。さらには、袁紹軍は幽州の戦からすぐに徐州に向かった為に物資が少なく、野営ばかりとなると補給が滞り兵の士気も下がる。
本当に短い範囲の、これがただ単に劉備軍のみを敵としているなら関わらないの
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