暗雲は天を翳らせ
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分遅くに集まって貰ったけれど……そうね、桂花が説明なさい」
さも当然の事であると語り、その場に居らずとも届いてくる覇気に冷や汗が愛紗の背筋を伝った。
「御意。隣に位置する徐州では現在袁家との戦が行われており、両袁家の策略によって劉備軍は窮地に追い詰められている。そこで、向こうから早馬が来たのよ」
しんと静まり返る謁見の間の厳しい空気を感じて、愛紗の喉がゴクリと鳴る。
「ありがとう。劉備軍からの交渉と言った所でしょう。誰が来たかは……見て貰ってからにしましょうか。入りなさい」
すっと立ち上がった愛紗は背筋を伸ばして歩みを進める。
袖から姿を現すと、
「な、なんやて」
「関羽……だと?」
武官の誰しもが息を呑んだ。
兵をやるでも無く、愛紗ほどの重要人物が戦場を離れて此処に現れた事に疑問を持つのは必然。
対して、稟と風は目を細めて思考に潜り始めた。
彼女達でさえ、予測では交渉は諸葛亮あたりが来ると読んでいたのだ。
だというのに愛紗が来た、それの意味する所は劉備軍が袁紹軍侵攻の情報を手に入れるのが遅れたということ。
各々で相手の思惑とこれからの展開、そして……己が主が何をするか、思考を巡らせていく。
愛紗は華琳に力強い瞳を向けて、すっと礼の姿勢を取りながら口を開いた。
「我が名は関雲長、大徳劉玄徳の一の臣にして大望の為、刃を振るうモノなり。夜分にこのような謁見の機会を設けて頂きありがとうございます、曹孟徳殿」
「よい、そちらも急いでいるはず。凝り固まった礼式は必要ない。交渉の内容を申せ」
突き刺さるように言葉と覇気を叩きつけられて、顔を上げるのも鈍重な動作でしか行えず。黄巾の時とは段違いのモノであり、愛紗は内心に緊張を強いられた。
「では……武のモノでありながら、この場に立たせて頂いた事にまず感謝を」
礼はいらずと言われても愚直に、型を崩さず真っ直ぐに華琳を見据える。その姿と態度に、ほうと華琳は感嘆の息を吐いた。
「我が主は徐州にて袁術軍と戦を行っておりましたが、袁紹軍の侵攻により個での撃退は困難と判断致しました。
そこで、徐州にて両袁家の撃退の為、ご助力をと思いこの場に参上した次第。何卒、徐州の民の為、一人でも犠牲を減らす為に、そのお力を貸して頂けないでしょうか」
愛紗はそこで大きく身体を曲げて頭を下げた。
武官であれば、己が力で主を守れない事はどれほどの屈辱であるのか、霞は一番に分かる為に表情を曇らせた。自分達もこのように誰かに助けを求める事が出来ていたら、と考えてしまうのも詮無きこと。
「まだよ」
短く、投げ与えるように放たれたその言は鋭い。愛紗は顔を上げず、華琳から続きが紡がれるのを待っている。
「対価を聞い
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