暗雲は天を翳らせ
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を持つ事が出来る。その為に彼女は秋斗とぶつかる事が多いのだ。
細かい所である。しかし、汚れ役を進んで背負う彼女は何があろうと変わらずにそれを遂行する。
変わらない、というのはそれだけで強い。曲がらないというのは誰かに安心感を与えられ、誰もを支えられるということ。
だからこそ、秋斗は誰よりも愛紗の事を尊敬し、背中を預ける事に迷いはない。
朱里が愛紗一人を選んで、本隊に合流させずに向かわせたのはその安心感から。
愛紗を送り出したのは……希代の覇王である曹操に対して臆さずに交渉が行えて、決して流されずに意見を言えるその点。
朱里の狙いは一つであり、それをもぎ取ってこれるのは愛紗だけであった。
がやがやと、謁見の間からは夜半であるのに楽しそうな会話が聞こえるも、愛紗は厳めしく眉を顰めて逸る心を抑え付けていた。
「むう……華琳様の安眠を妨害するとは……許せんな」
「クク、閨番の時に邪魔されんで良かったんとちゃうか? 桂花やあるまいし焦らされるの我慢出来へんやろ」
「おお、確かにそうか。って良くないだろう!?」
「春蘭、静かにしなさい! 霞も……後で覚えておきなさいよ?」
「ははっ、恐いこっちゃ。しっかしこんな夜中に召集なんて……なんややばいことでもあったんかいな。なあ、凪ぃ? ……って目ぇ開けたまま寝とる……ほんなら――」
「ひゃん! し、霞様! ちょ、やだ……んっ」
「いやぁ、ええ尻しとんなぁ♪ ここか、ここがええん――」
「霞! いい加減になさい! 明日のおやつ抜きにするわよ!?」
「はぁ!? 明日のおやつて店長んとこの甘味の『餡どぉなつ』やないか! 凪すまん! 分かった、もうやらへん!」
「い、いえ。寝ていた自分も悪いので……」
「霞ちゃーん。風でしたら抱きしめてもいいのですよー」
「むむ、そ、それくらいやったら――」
「風、そうなれば霞のおやつは桂花が食べるつもりでしょうから誑かして代わりに貰おうとしても無駄ですよ」
「なんやて? おいこら風。あんたぁウチを嵌めるつもりやったんかいな?」
「……ぐぅ」
「ねーんーなー!」
「おおー、いひゃいのでふひあひゃん」
「遅れてごめんなさいなのー! 季衣ちゃんも連れてきたの」
「ふあぁ、まだ眠いですよ華琳様ぁー」
「華琳様はまだよ。全員揃ったようだし、華琳様ももうすぐいらっしゃるから自分の場所に向かいなさい」
きゃいきゃいと騒いでいた声が桂花の声で収束し、謁見の間は徐々に静かになって行った。
その楽しそうな様子を聞いて、何処も自分達の所と変わらないのではないだろうか、と愛紗の脳裏に油断が浮かびかける。
ただ、それは直ぐに取り払われた。
足音だけで分かる程の自信と、凛と全てを張りつめさせるその声によって。
「揃っているわね。夜
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