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乱世の確率事象改変
暗雲は天を翳らせ
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けではないのよ桂花。

「あなたが負けているとは思っていないわ。今日より明日、明日より明後日、人は成長するモノなのだから今の自分を乗り越えなさい」
「は、はいっ」

 ぱあっと明るくなった表情に微笑み返し、今来ている案件を消化する為に話を戻す事にした。

「じゃあ教えてくれるかしら……劉備軍からは誰が使者に来たの?」

 分かりきっている事ではある。この時機であの勢力が送れる使者は限られている。袁紹軍進行の情報が早いうちに入り、一所に纏まって戦いながらであるならば諸葛亮が来れただろう。現状では田豊率いる袁紹軍と孫策軍相手ではそれをしてる暇も無いだろうけれど。
 送られた使者が私の予想通りならば……話は聞いてあげましょう。

「使者に赴いてきたのは……関羽です」
「……ふふ、こうも上手く事が運ぶとは。いいわ、関羽程の重要人物を送ってきたのだからこの夜半過ぎの訪問も許しましょう。直ぐに謁見の準備を。寝ているモノ達を起こして謁見の間に集めておきなさい」

 御意、と礼と言葉を残して下がった桂花を見送り、身なりを整えながら思考に潜る。
 薄い望みだったが、公孫賛を使者に送ってくれたなら、貸し付けのみで同盟を受けるつもりだった。幽州を取り戻す為に一時的な協力関係を築き上げ、公孫賛が私の元へ来る機会を与えたかったのだ。個人的な貸し付けを行えば、義に厚い彼女を幾多の糸で絡みとれたのは予想に難くない。
 しかしそれも叶わぬ願いとなった。まだあの誇り高き白馬の王を手に入れる機では無いということ。

――黒と白を両方手に入れるのは欲張り過ぎ、か。やはり、ここで手に入るのは見立て通りに黒一色。

 関羽が来たならば計画通りになるだけ。
 必要な糸は既に張り巡らされている。最後の一押しをするだけで絡みとれるだろう。

――とは言っても、諸葛亮の狙いはこれだけでは無いはず。あれほどの天与の才を持つモノが成長していないわけがない。幾つか予測を組みなおしておきましょうか。

 くるくると己が金髪を巻き込みながら思考に潜り続ける。
 諸葛亮が一番欲しいモノは何か。人は誰しも欲張りなのだから、誰かの為だけでは考えていられない。
 劉備の為、と言いながらもあらゆる理由を持ち上げて自分の欲を隠しているだろう。
 黄巾の時に話した性格からは……引き気味であるが負けん気の強い軍師。私相手にも迷わずに最善策を提示するくらいであったのだから内に秘める欲求は大きなモノだろう。
 劉備の王佐ならば、犠牲を減らす事が第一と考える……では無く、劉備の理想を叶える為に必要な選択肢にまで持ちこむ、持ち込みたい。
 つまり諸葛亮は……図らずも私と同じ事を考えた。そして――彼女は読み誤ったと実感するだろう。
 狙いは見事。もし、劉備軍が豫洲の国境付近まで陣
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