暗雲は天を翳らせ
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たちの動き、曹操がどう動くか、劉備の真の狙い、自分達が最も利する為には何をすればいいのか……膨大な計算が彼女の脳髄を整理していく。
明は何も言わず、ゆっくりと空を見上げて彼女の思考が纏まるのを待っていた。いつも通り、最善を導き出すだろうと安心しきった表情で。
「……今回はそのままでいい。劉備軍の補給は不可能になったから、長期戦には耐えられない。同盟を受けたなら、曹操から支援を受けるとしても足を引っ張る事になるし、私達は各所に伏兵を配置しつつのんびりと攻めて来るのを待つのが上策。ただ、孫策軍への警戒を最大限に引き上げる」
曹操でも無く、劉備でも無く、彼女が選んだのは孫策の警戒の強化。
何を狙っての事であるのか明には分からず、首を傾げて疑問を示すと、チラと目を向けた夕は一つ頷いて続きを紡ぐ。
「首輪が壊れた事に気付かせず利用するだけして、ボロ雑巾みたいに使い捨てる為。孫策が徐州に到着次第、建業に使者を送って孫尚香を暗殺。孫権も呼び寄せたい所だけど上層部の無茶のせいで内部が荒れてるから不可能。だから公路と七乃と紀霊に孫権は任せる」
「なるほどねー。で、もし孫策にばれたら?」
「その時は毒でも使って殺せばいい。あの血族、というか孫呉の土地柄は家族第一主義だからバカみたいに無理な戦を押し通してくるだろうけど、怒りで思考が狭まった軍は罠に嵌めやすい。戦場で先頭を切るあの女はいい的になる。曹操との戦をある程度で切り上げたらどっちみち情報を上げてこっちに向かわせるつもりだから問題なし」
くだらない、と言わんばかりに息を一つついての言葉。
一時の感情で動かずにもっと長い目で見て、確実に絶望を与える道を選ぶ冷酷さを持てばいいのに、と……夕は自身がそれを行っている為に孫呉のモノを格段に侮蔑していた。
「だよねー。最後まで抵抗するなら根絶やしにすればいいだけだし。先の事なんか知ったこっちゃないかー。孫呉なんか無くっても大陸は死なないし時代は回る。あんな土地、めんどくさいから焦土にしたっていいくらいだね」
そんな夕と同じように、明はなんでもない事のように言って退けた。
彼女達は自分の幸せしかいらないのだ。夕にしても、世界を変えるのは二の次、そんなモノは統一してからで十分に事足りると考えている。
どれだけ犠牲が出ようと、乱世を越える邪魔になるのなら滅ぼしてしまうのが彼女達にとって最善。利用出来ないモノには全く価値が無いのだ。
明の言葉を聞いて、自分が憎いモノと同じである事に気付いた夕は自嘲気味に小さく笑った。
「ふふ、私も所詮袁家の人間ということ。でも今の袁家よりも本初の作る袁家の方が良くなるのは確実だから民には我慢して貰おう。世界なんか繰り返しでしかないのだから、その中で自分の存在証明と最高の幸せを願って何も
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