暗雲は天を翳らせ
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つける機会を対価に時間を買うなんてさ、連合の時を思い出してあたし達が民の事気にしないって思わないのかねー」
明の発言に少しだけ悩んだ夕は、ポンと手を叩き納得の仕草、そしていつもの無表情で彼女を見上げた。
「……明が関靖の髪留めを届けさせたから、というのもあると思う。秋兄は私達の事を少しだけ信じてくれてるのかもしれない。秋兄は頭が悪くないから私達が民に被害を与えたら曹操と戦うのに不利になる事も分かってるはず。これからの状況がどうなるか分からない秋兄達からしたら、どんな場合にも対応し得る最良の一手かもしれない」
あちゃー、というように手を頭にやった明は少しだけ楽しそうに笑った。自分の行動がこの現状を生み出したかもしれないとは思わなかった故に。
「夕に対してもあたしに対しても意趣返ししてるって事かー。まあ、郭図が捕まえてきたらじっくり何考えてるか聞いてあげよっかね。それで、これからどうするの?」
「……明と私は一万の兵と一緒に城で直ぐに対策に掛かろう。郭図と文醜は中間地点で陣を敷いて貰う。最短経路に向かわせた兵は袁術軍と劉備軍本隊の挟撃。他には、南皮から幽州に補助の文官を送らせて内部掌握に力を入れて、顔良と本初の行動を早くさせるのも同時進行で行く」
決定した事は劉備軍の策に乗るという事。
取り引きは受けるが劉備軍を潰す事に変わりは無く、袁術軍がいるのだから時間をやる必要もないのだと判断して。
「了解♪ 何があるか分からないから夕の周りには最低でも五人の兵を準備しておくね。極力あたしが隣に居れるように動くけどさ」
「ん、ありがと。じゃあそろそろ行こう」
ウインクを夕に投げた明にコクリと頷き、軍を城に進めようとした――所で彼女達の元に一人の兵が駆けてきた。
「で、田豊様! 劉備軍本隊が……陣を片付けて全軍で豫洲に向け行軍を開始致しました!」
焦りながらの報告を受けて、夕と明の反応は驚愕。
彼女達は劉備軍が戦を行いながら曹操の元に使者を送ると考えていたのだ。数が少なかろうと劉備軍の力を侮っておらず、長い戦でじりじりと疲弊させながら兵力を減らし、曹操が同盟に乗った所で孫策軍をぶつける腹積もりだった。
それが全軍で、となると話が変わってくる。
未だ士気が高く、糧食も十分で元気な劉備軍と曹操軍に足並みを揃えられては手こずる事となると同時に、孫策軍が到着するにもまだ時期が早く、袁家だけで対応をするとなると兵を失いすぎる。
兵を下がらせた後、顔を顰めた明はのほほんとした桃香の顔を思い出して舌を出して不快感を表す。
「うへー、臆病ってのは厄介だね。それとも案外強か、とも言えるのかね」
対して夕は……ピタリと動きを止めて思考を回し続けていた。
着々と積み上げられていく展開、為政者
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