暗雲は天を翳らせ
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んな答えを返してくれても構わないわ」
「……答えられる事ならば」
愛紗が訝しげな目で見つめると、華琳は一寸だけ恍惚とした表情に変わるも、直ぐに不敵な微笑みに戻った。
「同盟という手段は劉備が選んだのね?」
「はい。我が主が自分で決断した事です。一人でも多くの人を死なせない為に。体裁も風評も投げ捨てて臆病者と言われようと、徐州を袁家から守る為に」
「確かに私達ならば袁家よりも上手く徐州を平和に出来るわね。でもその為に、私達の兵を犠牲にする事を選んだわけだけれど?」
「……我らは大陸の平和を願い、その為に乱世に立ちました。黄巾が終わっても荒れたままの大陸では、火の粉を振り払うだけで平和が訪れる訳がない。だから……あなたの言い方ならば利用しようとしています」
事実を突きつけられても、愛紗は逃げない。正直に自身の考えている事を話し、これは自分達の非力からだと認めている。
「他人を利用してでも成し遂げて守りたいモノがあるか。劉備の言い方ならばこうかしら、私達と協力し合えば平和は訪れるから、と」
皮肉気に言われて不快に眉を顰めた愛紗であったが、それ以上言葉を返そうとはしなかった。協力という道があるならば、白蓮の交渉を受けていたはずなのだから。
それを見て、華琳はここまでというように椅子から立ち上がった。
「関羽、あなたは惜しい人材だけれど……もう劉備の元でしか生きられないのね。ずっと支えてあげなさい、あの子にはあなたのようなモノが必要なのだから。部屋を用意させるから出立まで身体を休めておきなさい。単騎駆けは疲れたことでしょう」
すれ違いざま、背中越しに掛けられた労い以外の言葉は、愛紗にとって謎かけのようであった。
この交渉の行く末を言うでも無く、ただ支えろとはどういう事なのか。考えても分かるはずがなかった。
首を傾げる愛紗をそのままに、華琳は謁見の間を後にする。
――乱世が終わり、全てを手に入れたら劉備ごと私のモノになるのだから、とは言わないわ。今はあなたは要らない。覇道に対抗する大徳の敵対者は強大でなければならない。もっと、もっと大きくなりなさい……劉備。
乱世に於いて、大嘘つきの例外以外、彼女の欲しいモノは劉備軍には無い。
どうしても許せない存在である秋斗だけは彼女が彼女である為に、手に入れるにせよ、切り捨てるにせよ一時は己が元に必要であった。
また、いつかのように綯い交ぜになった感情を携えて、華琳は胸に手を当てた。
その男が何を選ぶのか、人の心の機微に聡すぎる彼女でさえ分からず、だからこそ面白く、同時に苛立ちが募る。
逸る心を抑え付けて、吹き抜けの廊下へと出た華琳は空を見上げる。
曇天の空は月も星も無く、煮え切らない彼女の心のようであった。
――これが終わ
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