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おじさんとぬいぐるみ
第九章
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第九章

「ですから」
「家族なんだ。僕が」
「だって。一緒に住んでるじゃないですか」
 それでだというのだ。妙子はにこりとして話す。
「だったら家族なんじゃないんですか?」
「まあねえ。養子ということになってるし」
 既に戸籍上の縁組はしている。それもなのだった。
「それならだね」
「はい、それで」
「それでなんだ。また僕と一緒にだね」
「御願いできますか?また」
「いいよ。アーケード街だけじゃなくてね」
「他の場所もですか」
「うん、今度行こうね」
 こう話すのだった。妙子に対してだ。
 そのうえでだ。また話すのであった。
「遊園地にも百貨店にもね。遊ぶ場所は色々とあるよ」
「有り難うございます。それじゃあ」
「今は帰ろうか」
 おじさんはにこりと笑ってこう話した。
「そうしてね」
「晩御飯ですね」
「今日は何かな」
「コロッケはどうですか?」
 妙子はそれはどうかというのだ。
「コロッケと。若布と揚げのお味噌汁で」
「あっ、いいね」
「それとほうれん草を茹でて。納豆なんかも」
「いいね。健康的だね」
「はい、健康第一で」
 妙子はおじさんの顔を見ながらにこにことして話す。
「それでいこうかなって思ってます」
「じゃあ今晩はそれでね」
「わかりました」
 こう話してだ。そうしてであった。
 二人は前に進もうとする。しかしだ。
 妙子は足元に何もないのにだ。つまづいてしまった。そして前にこけようとする。
 しかしそこにはおじさんがいた。妙子の身体を右手で慌てて抱き寄せた。
 そして残った左手でだ。妙子が手放してしまったぬいぐるみを掴んだ。
 そうしてだった。彼女を助けたのだった。
「有り難うございます」
「危ないところだったね」
「はい、うっかりしていました」
「気をつけてね。足元注意で」
「ですよね。本当に」
 今は苦笑いの妙子だった。だがその苦笑いもだ。
 清らかなものだった。その清らかな笑顔を見てだ。
 おじさんの頭の中で閃きが起こった。その閃きは。
「そうだ、頼まれてた新連載は」
「あの四コマのですか?」
「うん、それが決まったよ」
 こう妙子に話す。
「妙子ちゃんを主人公にするよ」
「私をですか?」
「モデルにするよ」
 妙子を元の姿勢に戻しながら。そのうえで話すのだった。
「そうしていいかな」
「そんな。私がモデルになんて」
「うん、そうしていいかな」
「私なんかでよかったら」
 断るにはだ。あまりにも嬉しさを感じ過ぎていた。それではだった。 
 満面の笑顔になってだ。そのうえでおじさんに答えた。
「御願いします。本当に」
「そうさせてもらうよ。それじゃあね」
「はいっ」
 妙子はぬいぐるみを抱き寄せながらその
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