第十一章 追憶の二重奏
第六話 咆哮
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気付き顔を上げると、一隻の巨大な船が自分が警備する建物の前に立つ鉄塔に近付いていく姿が目に入る。
「はぁ……でかい船だな」
「ありゃシャルル・オルレアンだな」
呆けたように声を漏らした衛兵の隣に立つ同僚が、頭上を超えていく巨大な船の名前を口にする。
『シャルル・オルレアン』号。それは三年前に亡くなった王弟の名前がつけられた船であった。アルビオン空軍最大のレキシントン号がない現在、アルビオン空軍最大の船である。アルビオン空軍最大と言うことはつまり、ハルケギニア最大の船であるということであった。そして、『シャルル・オルレアン』号はハルケギニア最大であると同時に最強でもあった。進空したのがつい先日であったこともあり、全長百五十メートルの船の上には片舷百二十門、合計二百四十門もの大砲が備え付けられているだけでなく、同数以上の最新の魔道具を改良した武器も組み込まれ、正に最大最強という言葉に誰も反論することは出来ないだろう。
そしてそのハルケギニア最大最強の船はガリア王室のお召艦でもあった。
「ん? おい、あれってまさか」
阿呆のように口を開けて船を見上げていた衛兵が、マストに見える王室の座上旗をミニすると同時に驚愕の声を上げた。
王室の座上旗が掲げられているということはつまり、
「王さまが乗ってるってことかい」
王が乗っているということである。
「何でまた王さまがこんな田舎に足を伸ばすんかいね? 観光?」
「ば〜か。んなわけないだろ……『実験農場』だろ」
眉をへの字に曲げて首を傾げ見当違いな考えを口にする同僚を馬鹿にした男は、チラリと背後の自分たちが警備する巨大なテント―――『実験農場』を目にすると小さく低い声を漏らす。
「『実験農場』ねぇ……しかし何だねこれ? これが出来てから変な連中が次から次へとやって来るし……ついには王様までやってくるなんてなぁ……そういやぁ聞いたか? イルマンの奴がエルフを見たとか言ってるらしいぞ」
「おいおいそれホントか?」
「まあ、あの酔いどれイルマンの話だから信じられないだろうけど……もしかしたら本当かもしれなくてな。あの酔いどれが真面目な顔で言ってたんだよ。三日前の夜警の時にな、夜に取り巻きをぞろぞろ連れて『実験農場』に入っていく奴らがいたから何とはなしに見てたそうだが、その中に夜だというのに帽子を被ってた奴がいたらしくてな。その隙間から覗いてたそうだぞ」
引きつった笑みを口元に浮かべながら横目で同僚を見る男は、自分の両耳に両手を当て、勿体ぶるようにゆっくりと口を開く。
「―――長〜い耳が、な」
「―――ッ!?」
恐ろしげにブルリと震えた身体に手を回した男は振り向くと、まるで得体の知れない化物を見るかのように背後の『実験農場
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