第十一章 追憶の二重奏
第六話 咆哮
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顔を上げたロングビルが眉を寄せると、アンリエッタは軽く首を横に振った。
「それでお聞きしたいのですが、何故陛下は虚無の担い手がアルビオンにいると分かったのですか?」
「実のところ、ルイズから虚無の担い手が四人いると聞いてから担い手について調べさせていたのです。これまでにそれなりの情報が手に入ったのですが、その中で最も可能性が高いのが先程のアルビオンにあるウエストウッドの森にいる者です」
「ウエストウッドの森にいると思われる虚無の担い手とは一体どんな方なのですか?」
「詳しい事はまだ分かってはいないのですが、金の髪の美しい少女であると」
「良く分かっていないにもかかわらず、何故その人が虚無の担い手である可能性が高いと?」
口調は穏やかでありながら、アンリエッタを見るロングビルの目は酷く冷めていた。士郎は背中に感じる冷ややかな気配に内心ドキドキしながらも、顔に一切の感情を浮かばせない無表情をキープしたままアンリエッタの様子を伺う。
幸いにもアンリエッタはロングビルの明白な態度について何も言わず、視線を士郎に向けた。
「その少女の近くに、あなたのような人がいるからです」
「俺のような?」
笑みの形に細められた目で探るような視線を向けられた士郎は、湧き上がる顔を背けたいという衝動を押さえ込み、首を傾げてみせる。
「はい。聞きなれない呪文を使う少女がいるとの情報を手に入れた者が、その少女と接触しようとしたのですが、ウエストウッドの森の中に入るなり剣を持った謎の少女に叩きのめされ森の外へ捨てられてしまったそうです。その剣を持った少女と言うのが、目にも止まらぬ速さで動き、魔法を斬り捨て、五人いた腕利きのメイジを瞬く間に倒してしまったと」
「……」
心当たりが有りすぎる士郎は、ただ押し黙るしか出来なかった。
「あまり刺激しては別の所へ逃げられてしまうといけませんので、その後は接触は止め、森を監視させると共にその少女たちについての情報を収集させた結果」
「可能性が高いと?」
「はい」
「それで俺たちに、か」
「シロウさんなら、その剣士にも勝てると思いまして」
いや、無理。
アンリエッタの言葉に士郎は反射的に首を振りそうになったが、何とか踏みとどまり、
「……接触して虚無の担い手なら連れて来いというわけか」
話をずらした。
「保護するにはやはりトリステインにいてもらったほうがいいかと」
何とか突っ込まれずに済んだか……。
「保護……か」
「はい。保護です。ガリアの担い手から守るため……それ以外ありません」
―――それ以外……か。
アンリエッタの言葉の中に引っ掛かりを覚える士郎。
直ぐに
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