第十一章 追憶の二重奏
第六話 咆哮
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。少しばかり厄介なことが……。ですので出来るだけ早くもう一人の虚無の担い手を探し出さなければいけません」
もう一人……か。
士郎はアンリエッタが口にした内容の一部に意識を向けながら、一瞬だけ背後のロングビルに目を向けた。
ティファニアが虚無の担い手であると知っているのは、士郎の知る限りでは二人しかいなかった。しかし、そのどちらかから漏れたとは士郎には欠片も思えなかった。何故ならその二人と言うのがロングビルとセイバーの二人であるからだ。
セイバーは元々この世界の人間ではないため、ティファニアの力がどれだけ重要なものであるか理解は余りしていないようであった。トリステインに帰る前に、セイバーに『虚無』について簡単に説明し、ティファニアが虚無の使い手であると教えると同時にその事が周りに知られると厄介な事になると伝えたのだが、セイバーの返事はただ一つ頷いて「分かりました」とだけである。
事の重大性についてちゃんと説明したのだが……余りにも泰然としすぎていた。
らしいと言えばらしいのだが……とは言えあのセイバーの口から漏れることはまず有り得ない。
そしてそれはロングビルも同じくだ。
ロングビルは元々からティファニアの使う魔法が他のものとは違うと感じていたようであり、ウエストウッドの森から学院に帰った後、相談を受けた士郎は隠すことなく正直に教えていた。薄々予感していただけあってか、話を聞き終えた後のロングビルに動揺は見えなかった。
……『虚無』がどれだけ周りに影響を与えるか知っているロングビルが、誰かにその事を喋るとは思えない。
なら何故虚無の使い手がアルビオンにいると特定出来たんだ? アニエスか? いや、しかし彼女が気付いていたとは思えない……ではどうやって?
外見上は全く変わらないまま士郎が内心で悩み唸っている閧焉Aアンリエッタの話は続いていた。
「まだ確定ではありませんが、アルビオンにいる虚無の担い手はウエストウッドという森の中にいると思われます」
「っ……どうしてそこまで分かっているのですか?」
「? あなたは?」
思わず声を上げたロングビルを目にし、アンリエッタは首を傾げた。その様子を見て、そう言えばこの二人は初対面だったなと内心で手を叩く士郎を他所に、ロングビルはアンリエッタに向け頭を下げる。
「トリステイン魔法学院で学院長の秘書をしていますロングビルと申します。ミスタ・シロウとはそれなりに長い付き合いでありまして、騎士隊の者が動けないと聞き、力になれればと思いまして。事情についても最低限の事は知っていますのでご安心ください」
「そう、ですか……あなたがミス・ロングビル。では、あなたがあの……」
「わたしが何か?」
「いえ、何でもありません」
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