第十一章 追憶の二重奏
第六話 咆哮
[4/15]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
洗い流そうか……と……やっぱり駄目?」
顔を覆った手の指の隙間からジト目で見てくる士郎の視線を受け、ジェシカは「てへ」、とばかりに舌を出して首を傾げてみせた。全く邪気のない顔で。邪気がない分、余計にタチの悪いジェシカの姿に、士郎は思わず溜め息を吐きながらも膝の上に座るジェシカを抱えて下ろすと、椅子から立ち上がった。
「駄目に決まっているだろう。仕事なんだろ。早くしないと遅刻するんじゃないのか?」
「そうね。遊んでる暇なんか実はないのよ。それじゃ、ルイズのことしっかりね」
士郎の指摘を受け、はいはいと頷いたジェシカがベッドの上に放りっぱなしのメイド服に手を伸ばした瞬間、
「隊長ッ!! ご下命が来たぞッ!! 陛下からのご下め―――……い……が」
ドアからギーシュが飛び込んできた。
部屋に飛び込んできたギーシュの目が、半裸でベッドの上の落ちたメイド服に手を伸ばした姿で固まるジェシカの姿を捕らえた瞬間、ギーシュの身体が氷ついたように固まる。視線をジェシカに向け固定したギーシュの視界の隅に、ベッドに眠る他二名の姿を捕らえると、これ以上ないくらいに見開かれたギーシュの目が更に開かれた。
「……ギーシュ?」
固まったまま動かないギーシュに、何処か既視感を感じながら士郎は恐る恐る声をかける。
と―――、
「ドチクショォォォオオオッ―――ッ!!!」
そこには、嫉妬に狂いし漢がいた。
目を、顔を真っ赤に染めたギーシュは、もはや人類とは思えない奇声を上げると、士郎に向かって飛びかかる。獣というよりも蟲のような動きで迫るギーシュの姿を視線で追いながら、士郎は溜め息を吐きながら拳を握り締めると、
「またかッ!!」
カウンター気味にギーシュの顔面に拳を叩き込んだ。
「しかし、こんな大人数で来てしまったが良かったのか?」
「いいんじゃない? 別にそこのところを指定されてないんだろ」
「まあ、そうなんだが、キュルケとタバサは授業はいいのか? 最近色々あって殆んど出席してないだろ」
「ん? ああ、いいのいいの。そこのところは上手くやってるから、あたしもタバサもね。わたし達よりも、そっちの女秘書の方がどうなのよ?」
「最低限の仕事は終わらせたよ。残りはあのじじ―――オールド・オスマンに押し付け―――に任せてきたからね」
「……可哀想にな」
トリステイン王国の首都。その更に中心であるトリスタニアの王宮の通路を、緊張した様子も見せず軽口を叩きながらこの王宮の主の下へと向かう一行がいた。
水精霊騎士隊の隊長である士郎を中心とした一行である。とは言え、水精霊騎士隊の隊長である士郎はいるが、他は全員騎士隊とは関係のない者であった。先
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ