第十一章 追憶の二重奏
第六話 咆哮
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ョゼフがいる貴賓席からは結果をうかがい知ることは出来ない。
ただ、金属が軋みを立てる音だけが鈍く響いていた。
「力も十分だな」
薄らと晴れてきた土煙の中から姿を現した三体のゴーレムの姿を見たジョゼフの口から、満足気な声が漏れる。
剣と槍。武装した二体の土ゴーレムに襲われたヨルムンガンドは未だ健在であった。
左手に剣の刃を掴み、右手に槍を柄を掴んだ姿で仁王立ちするヨルムンガンド。二体の土ゴーレムは必死になって自分の武器を取り戻そうとしているが、武器を掴むヨルムンガンドはピクリとも動かない。そんな中、辺りに響く金属の軋みを上げる音はますます大きくなり、遂には決定的な破壊の音が響く。
鈍い破砕音を立てながら、大剣と槍が破壊される。
取り返そうと武器を引っ張っていた二体の土ゴーレムは、突然己を支えていたものがなくなり後ろに倒れ始める。
ヨルムンガンドは掌に残った武器の欠片を放り捨てると、鎧を身につけているとは思えない程の素早さで駆け出す。あっと言う間に倒れ掛かる二体の土ゴーレムの間に辿り着いたヨルムンガンドは、両手で二体の土ゴーレムの身体を掴むと、
―――ズッ―――ッ!!
地面に叩きつけた。
三度目に響き渡った轟音と舞い上がった土煙は、一度目と二度目とは比べ物にならなかった。
その余りの轟音と衝撃により、貴賓席に座るジョゼフの身体が椅子から浮き上がり、自然と立ち上がってしまう程に。
「―――クハッ」
椅子から強制的に立ち上がらせられたジョゼフの口元から空気が漏れるような笑みが溢れる。
貴賓席にまで舞い上がった土煙は濃度も範囲も大きく、晴れるまでには時間が掛かりそうだ。視界が完全に塞がれた中、耳に届くのは砂が擦れる音だけ。先程まで響いていた金属音や、巨大な足音は聞こない。閉じきられたコロシアム内には風がないため、かなりの時間が経たなければ視界が晴れることはなかった。
次第に薄まっていく土煙の中、巨大な影が浮かび上がる。
「素晴らしい」
土煙が晴れた中、コロシアムにはヨルムンガンドの姿だけがあった。ヨルムンガンドは地面を殴りつけるような格好で固まっていたが、土煙が完全に晴れるとゆっくりと立ち上がる。足元には大量の土砂の姿があり、その横には砕けた大砲の姿があった。
ヨルムンガンドは剣と槍の土ゴーレムを地面に叩きつけ、その轟音が消える前に大砲の土ゴーレムに襲いかかると、拳と地面でサンドイッチにするかのように殴りつけたのだ。その威力は推して知るべく、土ゴーレムはただの土砂と成り果てた。
ゆっくりと立ち上がり、ヨルムンガンドがジョゼフの立つ貴賓席に顔を向ける。
ジョゼフは満足げに一つ頷くと、横に控えるミョズニトニルンに片手を上げた。
ジョゼフの意志を汲み取ったミ
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