第十一章 追憶の二重奏
第六話 咆哮
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ると、唯一開かなかった北側の柵に身体を向ける。
「『ヨルムンガンド』の相手には、西百合花壇騎士団の精鋭が造り上げたスクウェア・クラスの土ゴーレムが三体でございます。それぞれ武装を使いこなせるまで訓練をさせています」
ミョズニトニルンが三体の土ゴーレムについて説明を終えると同時に、今まで閉じていた北側の柵がゆっくりと開いていく。
「ほう」
北側の柵の奥から、巨大な手が現れた。その姿を目にしたジョゼフの口から、感嘆の吐息が漏れる。それは先程の地揺れよりも大きな音と揺れと共に、ゆっくりと姿を現す。それは先程の全長二十メートルはある土ゴーレムよりも一回り更に巨大なゴーレムであった。
二十五メートルはあるだろう巨体は帆布で包まれており、その姿は分からない。だが、その異様はその姿が見えずとも分かった。一歩、一歩とゴーレムが動く度に、椅子に腰を下ろした身体が浮くほどの振動が響き渡る。しかし、巨大な振動ではなく、ジョゼフの目はその動きに目を見張った。
「人と変わらんな」
ぎこちなさは全く見えず、その動きはまるでゴーレムではなく巨人がその帆布の下にいるかのようであった。
巨大ゴーレムが足を止めると、一瞬コロシアムが静寂で満たされ―――次の瞬間。
「始まったか」
一際巨大な地響きが鳴ると共に、大量の土砂が舞い土煙が辺りを包む。
ジョゼフが座る高い位置に設置された貴賓席まで土煙が上がらせ、二体の土ゴーレムが巨大ゴーレムに向かって駆け出す。迎え撃つように巨大ゴーレムが腰を落とすと、
―――ドンッ!!
爆音と共に辺りに漂う土色の中に黒が混じる。三体の内動かなかった土ゴーレムが大砲を発射したのだ。いかに巨大で頑健なゴーレムであっても、大砲の一撃を受ければ跡形もなく砕かれてしまう。
だが―――。
「ふむ、鎧の機能は正常に働いているようだな」
ヨルムンガンドの身体を包んでいた帆布は全て吹き飛ばされてしまってはいたが、ヨルムンガンドは健在であった。岩をも砕く大砲の一撃を受けながら、小揺るぎもしていない。帆布が吹き飛ばされ、ヨルムンガンドの地肌が露わになる。帆布の下には、ほぼ全てのゴーレムで使われている土ではなく、鈍く光る鋼鉄が姿を現した。
それはジョゼフの言葉の通り、正しく鎧であった。
完全武装の騎士のように全身を鋼鉄の鎧で身を包んだヨルムンガンドに、茶と黒が混じる煙を切り裂きながら二体の土ゴーレムが襲いかかる。
大剣を持った土ゴーレムは大上段に振りかぶった大剣を振り下ろし、槍を持った土ゴーレムは槍を突き出す。
未だ宙に舞う土煙を切り裂き貫きながら二つの凶器がヨルムンガンドに迫る。
撃音が響き、再度大量の土砂が舞う。
コロシアムを覆い隠す程に舞い上がった土煙により、ジ
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