第十一章 追憶の二重奏
第六話 咆哮
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ケギニアに住む人間ならば誰もが震え恐るエルフでさえ恐怖を感じさせるものとは?
ビダーシャルの声に潜む恐怖は、まるで理解不能な化物に対するような生理的で根源的な恐怖の色が見える。
「アレか? ちゃんと説明はしたはずだが? アレは『ヨルムンガンド』と同じ『騎士人形』のようなものだと」
「はっ……『騎士人形』……騎士人形か……確かにそう聞いた。それは確かにその通りなのだろう……だが、あんなものだと知っていたら貴様たちに教えるものは何もなかった」
吐き捨てるようにそう言うと、ビダーシャルは青い髪の男に背を向けた。
「ふむ、もう帰るのかね?」
「義理は果たした。もうこれ以上貴様と同じ空間にいたくはない……アレも同様だ。近くにあるというだけで怖気が走る」
歩き去っていくビダーシャルの背中に向け、青髪の男は声を投げかける。
「今からアレの運用実験をやるのだが、それぐらいは見ていってもいいんじゃないか?」
「聞こえなかったのか……ッ。これ以上貴様とアレが近くにいるというだけで気分が悪くなると言っているのだッ!!」
足を踏み鳴らし振り返ったビダーシャルは、何時もの泰然とした様子をかなぐり捨てた様子で睨み付ける。
「我々エルフにとって悪魔とは『シャイターンの門』から現れる者であったが、どうやら違ったようだ」
振り返ったビダーシャルは、何の表情も浮かべず顎髭を撫でさすりながら自分を見やる男に指を突きつけると、
「貴様は悪魔だ―――ガリア王ジョゼフ」
恐怖と悪意と敵意で濁りきった声を向けた。
「よろしいのですか?」
「構わん。あのエルフの知識はまだまだ必要だからな。それよりも準備はどうなっている」
「もう間もなくかと」
ビダーシャルが去った後には、貴賓席に腰掛けるジョゼフと、その横に立つミョズニトニルンの姿があった。正確にはその二人の姿だけしかない。二人の視線は去っていったビダーシャルの背中が消えた方向ではなく、貴賓席の前に広がる光景。古代のコロシアムを思わせる巨大な円形の造りになっており、その東西南北の位置には金属製の柵の姿がある。建造物であった。
ジョゼフの先を急かす声に、ミョズニトニルンが答えると、まるでタイミングを図っていたかのように東、西、そして南側に設置されていた柵が上に向かって開き始めると、その奥から地響きと共に巨大な影が現れた。三つの門から現れた巨大な影が姿を現す。それは三体の全長二十メートルはあるだろう巨大な土ゴーレムであった。三体のゴーレムはそれぞれその巨体に見合うだけの巨大な武器を身につけていた。大砲、大剣、大槍で武装した三体の巨大な土ゴーレムは、コロシアム中央で足を止め
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