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剣の丘に花は咲く 
第十一章 追憶の二重奏
第六話 咆哮
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 窓の向こう、朝日を浴びながら小鳥が軽やかな声を上げ飛んでいく。泥のような疲労が溜まった身体を動かし窓を開くと、朝特有の冷たく甘い風が窓の隙間から流れ込み、部屋の中に溜まった粘性さえ感じさせる空気を揺り動かす。何も身にまとっていない上半身の乾ききる前の汗ばんだ身体を風が撫で、未だ身体の奥に燻る熱が僅かにおさまる。山の向こうに見える太陽がゆっくりと昇っていく姿を眺める士郎は、眩しげに目を細め―――、

「……太陽が……黄色い……」

 ―――溜め息を吐いた。





「まったく……とんでもないな」

 士郎は窓枠に腰掛けるように寄りかかると、視線を天蓋付きのベッドに向ける。大人が三、四人並んで寝ても余りある程の大きさのベッド。そのベッドの上に、眠る三人の少女の姿があった。一枚のシーツを互いに引っ張り合い奪い合っているため、三人の太ももが危険な位置まで露わになっている。窓から差し込む朝日がベッドの上に差し、まるで陳列された商品のように並ぶ少女たちの太ももを照らし出す。シーツの隙間から覗く陶器のような真っ白な太ももが、鏡のように朝日を反射させ、士郎の目を射抜く。光りから逃げるように移動した士郎の視線は、仲良しな姉妹のように並んで眠る三人の寝顔に移る。
 三人―――ルイズ、シエスタ、ジェシカたちは、昨晩―――いや、今朝? か? の行為を想像させない何処か幼ささえ感じさせる寝顔を浮かべている。しかし、汗に濡れ肌に張り付いた髪や、完熟した林檎のように瑞々しく赤みが差した頬、まるでお腹いっぱい(・・・・・・)食事を取った獣のような満足気な気配を漂わせている姿は、経験があるものが見れば一目で何があったか分かるものがそこにはあった。
 未だ起きる気配を全く見せない三人から視線を落とした士郎は、乱れ果てたベッドを見る。あちこちに皺が寄り、まるで雨が降ったかのようにグッショリと濡れそぼったベッド。色々なもので濡れたベッドを見た士郎は、頭を回し完全に姿を現した太陽を細めた目で見上げ、

「……今日中に乾くか?」

 現実逃避気味の声を漏らす。
 気を取り直すように顔を左右に振ると、腕を持ち上げ顔に近づける。

「……風呂……は無理か」

 自分の身体から漂うとある匂い。甘くすえた生々しいそれは、分かるものが嗅げば一発で答えが分かる。そんな匂いを嗅ぎながら、士郎はこれからのことを考える。日は昇ったとは言え、まだ朝は早い。今なら外で水浴びをしてもまだ大丈夫な筈だと。結論に至った士郎は、善は急げとばかりに窓枠から身体を離すと、扉へと向かって歩き出す。そして、部屋の中央付近に置かれたベッドに近づいた瞬間、

「何処行くの?」

 シーツがズレる音と共に微かに掠れた女の声が上がった。

「身体を洗いにな」

 女の声に足を止め
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