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ドリトル先生と京都の狐
第五幕その三
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 そして五分程するとです、皆の前に長老が来ました、そのうえでこう言ってきたのでした。
「ほっほっほ、流石は先生じゃな」
「やっぱり来てくれましたね」
「うむ、実は人と話をしておったのじゃよ」
「天狗の方々とですね」
「そうじゃ、こちらじゃ」
 長老が自分の右斜め後ろを振り向くとです、そこにです。
 日本の山伏の格好をした人達がいました、殆どの人は烏の頭で背中にはやっぱり烏の羽根があります。そしてその天狗達の前にです。
 赤い人間のお顔でとても高いお鼻の白い髪とお髭の人がいます、その人には羽根がありません。そしてその人が先生達に言ってきました。
「我等が鞍馬山の天狗じゃ」
「貴方達がですか」
「そうじゃ、話は狐の棟梁から聞いておる」
 もうそれはというのです。
「霊薬の素を欲しいのじゃな」
「そうです、狐のお母さんの結核を治す為に」
「労咳じゃな」
 その赤い顔の天狗、大天狗は先生の言葉を聞いて腕を組んで頷きました。
「あれのことじゃな」
「そうです、今のところ病の進行は遅いですが」
「しかし結核は危うい病じゃ」
 それこそ命に関わります、今はお薬がありますが昔はお薬がなかったので結核で死んでしまう人はとても多かったのです。
 だからです、大天狗も真剣なお顔で言うのです。
「わしも協力しよう」
「有り難うございます、それでは」
「うむ、ただな」
「ただ?」
「御主はわしをはじめて見たが驚かぬな」
 大天狗は先生が自分達を見て全く驚かないのでこう言うのでした。
「何も動じておらんな」
「お話は長老さんから聞いていましたので」
「この山に天狗がおるとか」
「はい、そして貴方達がどういった方々かも」
「他の国から来たな」
 大天狗は先生の髪の毛と目、そしてお肌の色を見て言いました。
「そうじゃな」
「はい、イギリスから」
「あの国からか」
「イギリスのことはご存知ですか」
「わしも行ったことがあるからな」
 だから知っているというのです、イギリスのことも。
「それに書でも読んだわ」
「だからですか」
「知っておる、しかし御主のそのわし等をはじめて見ても驚かぬ肝には関心した」
 先生のそうした何事にも動じない心にそうなったというのです。
「気に入った、名は何という」
「ドリトルといいます、医者をしています」
「左様か、医師か」
「はい、そうです」
「ではな」
 それではというのです、そしてでした。
 大天狗は右の袖の下に左手を入れて白い木箱を出してきました、その木箱を先生に差し出しながら言います。
「これが霊薬の素の一つじゃ」
「結核の薬のですね」
「そうじゃ、山の黴から作ったものじゃ」
「黴から。ではペニシリンですか」
「ぺにしりん?今の薬じゃな」
「はい
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