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とらっぷ&だんじょん!
第一部 vs.まもの!
第13話 きゅうそくおわり!
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誤解もいいところよ。むしろそれはアノイア教の源流とでも呼ぶべきもの……あなたもそれくらい、本当は知ってるでしょう」
「あ、はい……」
「何つっても、学校でいやっつーほど写本させられたからなー! ルカ、お前もそうじゃなかったか?」
「写本なら、確かに何度も行いました。写本によって神の教えを広める事は修道士の大切な務めです」
「好んでやりたいものではなかったけど」
 ノエルの言葉に、ウェルドは嫌な事を思い出して頭を振る。
「俺さー。文字の読み書き覚えんの遅かったから字がすげー汚くってさー。教授に散々苛められたんだよなー。馬鹿にされて」
「確かに文字の汚い本ほど腹立たしいものはない」
 壁際からディアスの声が飛んできて、ウェルドはむっとした。
「ねーねー、あんたもこっち来れば?」
「俺はここで結構だ」
「俺が学生の頃にさ」
 ウェルドは言う。
「もう写本とかいう面倒な事もうやらなくていいっつー話が出たんだよな、一時期。なんか活版? 印刷? とかいう技術が発明されたとかで」
「いんさつ? なにそれ」
「うーん、俺も聞いた話だから詳しくは知らないんだけどな。何でも文字が彫られた金属の棒がたくさんあって、それを一文字ずつ組み替えて、インクをつけて紙に押しつけたら本ができる、みたいな」
「版画の仕組みを文字に置き換えたような物ね。あたしも話を聞いた事があるわ。未だに実物にお目にかかれてはいないけど」
「活版印刷の技術はレノスの聖職者連中が掌握した。世に出る事はない」
 再びディアスが口を挟む。ウェルドは振り向いた。
「掌握した? 何で?」
 彼は本に目を落としながら答える。
「聖書を大量に刷られては、奴らにとって不都合だからだ。そのような事が起きれば、聖書に実際に書かれている内容と聖職者連中が民に布教する内容の乖離(かいり)が白日の下に晒される。教皇以下、聖職者連中は免罪符をはじめとする金を巻き上げるシステムを喪失し、更に宗教分野での革命という事態を呼びこみかねない」
「革命ねえ。そう簡単に成功するかぁ? それが本当だとしても、相手はレノス……アノイア教の総本山だぞ」
「革命が成功する条件は、現体制の維持に意味が無くなった時、そして現体制があまりにも腐敗しきった時……。今のレノス、ひいてはアノイア教の現状は、いずれの条件も満たしている」
 ルカを見た。下唇をかんで俯き、言われるがままだ。彼は何も反論しなかった。
「……それにしても、随分レノスの情勢に詳しいんだな」
「この程度の内容は、多少の興味があれば誰にでも調べられる。特別な事ではない」
「ああ、そうかい」
「歴代のレノス教皇とその取り巻き共によって握り潰された発明は印刷技術に限らない」
 ディアスは石版を彫るのをやめ、(のみ)を置く。
「冶金術、古くは錬金
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