狼の子と女の子
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そう尋ねる彼の声色にはいつものプライドの高さは微塵にも感じられない。
この少年にも他人を心配する一面があるのだなと感心した所でふと疑問に思う。
何故こんなにも近くに声が聞こえるのだろう?
反射的に強く閉じていた瞼を開けた先には、闇にも似た黒い瞳があった。
「……少し熱があるじゃん。つかまっててよ」
「えっ……うわっ!?」
右手を急に誰かに引っ張られたかと思えばそのまま首の後ろに回され、彼女が担がれていることを理解したのはそれがコンラッドだと判明した後だった。
「だっ大丈夫だよ。ちょっと頭痛がするだけだしっ」
「いいから。ちゃんとしっかりつかまっててよ」
「それに私、おっ重いし…」
「……そんなこと心配してたわけ?」
「そんなことって何よっ!これは女の子にとって重要なんだからっ」
気にしていることを、しかも、体重のことを「そんなこと」と言われて憤慨しない女性はいないだろう。
「気にしなくて良いよ。………………熊より軽いし」
………………かつて、自分の体重を熊と比較された女性がいただろうか。
アレの体重はいくつだっけ?と考える余裕はなかった。
「ルヴァーナっ!?一体どうしたんだと言うんだいっ!!」
「……風邪を引いたみたいっすよ」
「風邪っ!?具合は?吐き気は?熱はあるのかい?」
「うん……、少し熱があるみたい。でも…」
「大変じゃないかっ。今日はもう閉店してしまおう。一日休んでもダメだったらすぐにお医者さんに診てもらおうっ」
「ちょっ!お兄ちゃんっ!?」
店に入るなり矢継ぎ早に質問してくるアズウェルに大丈夫だよっ!と、声を張り上げる彼女の隣でただでさえ鋭い瞳を余計に険しくさせている彼に全く気づいてはいなかった。
「もうっ……お兄ちゃんたら」
外出着から足首まですっぽり隠れる厚手の白いネグリジェに着替えると、先程アズウェルが持ってきてくれた赤いマグカップの取っ手を持つ。
中にはルヴァーナの好物のココアがたっぷり注がれてある。
何度か息を吹いてからズズっと、空気と一緒に喉の奥に飲み込むとホッと温まる。
体が冷えた時にはやっぱりこれが一番効く。
まだ頭はズキズキと痛むが、こんな時間に寝込むほどではない。
窓の外に見える木の枝は冬の弱った陽の光に照らされ、雪解け水を滴らせるその様は今はまだ眠っている燭台の蝋燭を思わせた。
「でも、こうやってのんびりするのは何年ぶりかな…」
空になったマグカップを机の上に乗せると、ベッドの中に体を沈める。
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