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少女1人>リリカルマジカル
第五十一話 思春期D
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いたので、最初はかなりおろおろしてしまった。


 アリシア・テスタロッサは、誰よりも我慢強かった。原作でも、彼女は5歳という幼さでありながら、寂しいという思いに蓋をして、母親に笑顔を見せていた。ただこの世界では、兄という存在のおかげで、彼女の思いをくみ取ってくれる相手がいた。

 アリシアにとってアルヴィンは、とても大きな存在だった。本人たちはそんな風に意識していなかったが、アリシアは誰よりも兄を頼っていた。父親がいなかったアリシアにとって、無条件でかわいがってくれる、守ってくれる兄は、彼女にとって父のようなものだったのだ。

 子は親の背中を見ながら成長する、という言葉がある。なかなか会うことができない両親より、最も身近な親であり、兄である彼の背中をアリシアは無意識に辿っていた。彼が興味を持つものに自分も興味を持ち、彼が持っているものを自分も持ちたいと思った。

 母親からの信頼を受ける兄のように、自分もなりたい。妹という守るべき相手がいる兄のように、自分も姉として守ってあげたい。純粋な思いから生まれた道は、多少の歪みを持ちながらも真っ直ぐにアリシアの中で芽生えていた。

 もし、彼女がそのまま成長していれば、いずれ兄と自分は同じ道を歩けるわけじゃないと気づけただろう。クラナガンに引っ越し、友人ができ、自然と彼らの世界は広がる―――はずだった。

 その妨げとなり、アリシアの兄への無意識な依存を強めてしまった原因は、『ヒュードラの暴走事故』。あの事故は、彼女の中の最も奥に、重く深い傷を残してしまっていた。



「……できない」

 グッ、と自身が持つデバイスを握り締める。「できない」という事実の悔しさが、無力感が、彼女の胸中に溢れる。真紅の瞳は学校で貸し出してもらったストレージデバイスを見つめ、唇は紡いでしまった言葉を飲み込むように固く噛み締めた。

 初等部2年生の冬頃から、彼女は友人と兄に悟られないように動き、時間があれば魔法訓練所で杖を振り続けていた。そしてそれは、3年生に上がった今でも続けている。初めて魔法を教わった2年生の半ばぐらいから、彼女は周りと自分の力量を薄々感じとっていた。その事実に、背筋が震えたのだ。

 同じスタートを切ったはずの友人たちが、どんどん上達していく様子。彼女はそれを、笑顔で祝福してきた。友人たちが努力をして、その力を手に入れたのを知っているから。嬉しそうに笑う彼らが、大好きだったから。

 だけど同時に、どうして同じだけ努力をしているはずの自分は上手くできないのか。そんな思いが、生まれることがあった。そして、そんなことを思ってしまう自身に蓋をした。その答えを、彼女はなんとなくだが気づいていた。だけど、それを認めたら……、自分ではなくなってしまうかもしれない。それが、ず
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