第五十一話 思春期D
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節操がないよな。攻撃に防御に、補助に探索とか。苦手なはずの系統にも、手を出しているし」
「……あー、否定はできない。必要に駆られてっていうのもあるけど、基本魔法ならなんでも使ってみたいって気持ちがあったからな」
「マジで節操がなかった。それでなんとかなるのかよ?」
「ははは、なってねぇかも。クイントやメガーヌと戦うのに、通じるかどうかもわからないし」
「は?」
流れ作業の手が止まった。エイカが目を見開き、俺の方に顔を向ける。どうかしたのか、と思ったがそういえば運動会のことは話していなかったか。俺は小さく笑みを作り、今日あったことをエイカに話しておく。どうせすぐにわかることだ。
そして俺からの説明を聞いていく内に、エイカの頬が引きつっていくのがわかった。
「うわぁ…、ご愁傷様」
「エイカさん。そんなあからさまに、自分は関係がなくてよかった、って顔をしないでよ」
エイカの魔法の訓練はベルカ式ということもあり、クイントやメガーヌから教わることが多い。エイカにとって、2人は師匠のようなものだろう。故に、あの2人のことを一番客観的に知っているのは、彼女かもしれない。
そんな人物からの憐れみの言葉である。へこむぞ、さすがに。
「ふーん、それであのメガネをかけている客……お前の先輩ってやつに相談をしに来たと」
「まぁね。何故か俺が、逆に相談相手になっているみたいだけど」
「お前が戦闘ね…。できるのか?」
「愚問だな、エイカ。伊達にリニスと金魚と戦ってきていねぇぞ」
「お前が自信満々な理由が、激しく理解できないんだが」
時々ウィンにも揉まれています、と告げると手で額を抑えだした。あの子見た目と違って、俺が全力で出した防御壁を6枚ぐらい吹っ飛ばしてくるんだぞ。ある意味ウィンと戦え、と言われた方が本当に怖い。
「妹と戦え、と言われるよりはましだと思うさ」
「妹と、ね。……あいつは?」
「……アリシアの魔力資質はほとんどない。今回の競技に出場はできないんだ。だからこそ、俺たちが頑張らなきゃいけない」
「お前。まさかと思うが、あの時のことまだ引きずっているのか?」
目を据えながら俺を見るエイカに、一瞬言葉が詰まった。彼女の言葉は糾弾するようなものではないが、静かにこちらへ問いかけてきた声には重みがあった。あの時のこと。確かに全く関係がないかと言われれば、首をたてには振れない。
……エイカはあの時、俺が巻き込んでしまったから事情を知っている。記憶に引っかかるのは、2年前にしてしまった兄妹喧嘩。俺が一番の原因だと今でも思うけど、実際は誰も悪くない、そんな喧嘩。最後はちゃんと話し合って和解した、過去の出来事。
記憶を辿り、あの時のことを思い出す。アリシアが俺に言ったこと。俺がアリ
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