第五十一話 思春期D
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先ほどまでの感情が無くなったわけではないからだ。それでも、自分の言葉が大好きな人を間違いなく傷つけた。
「ママ! ねぇねは大丈夫!?」
「にゃぁ!」
病室の扉を勢いよく開け、慌てて部屋に入ってきたのは、ウィンクルムとリニス、その後ろにはコーラルとヴェルターブーフがいた。それぞれ別の場所にいたが、連絡を受けた後、待ち合わせをして合流したのだ。全速力でリニスたちを抱えて走って来たため、ウィンクルムは汗だくになりながらもたどり着いた。
ウィンクルムを捉えたアリシアは、ギュッと布団を握り締めた。立派なお姉ちゃんとして大切にすると決めたのに、心配をかけさせてしまった。今までしてしまったことが、姉として情けなくて、消えてしまいたかった。
「ウィンちゃん、病院の中で走っちゃ駄目よ。大声も出したら―――」
「ッゥ……!」
「わッ、ねぇねっ!?」
「アリシアッ!?」
開いた扉から、ウィンクルムを追いかけてきたイーリスにプレシアたちが気を逸らした瞬間、アリシアは裸足のまま、病室から駆け出した。ウィンクルムの横を通り過ぎ、病院の出口へと走っていってしまった。
「ッ、ウィンが追いかける!」
「待ッ、ウィン!?」
『僕がついて行きます! ですから、ますたーをお願いします』
ウィンクルムもコーラルも、事情はまったくわからない。それでも、動かなければまずいことは理解した。コーラルは俯くアルヴィンの方へ、静かに一度光を放つと、ウィンクルムにくっ付きアリシアを追った。走って行ったアリシアに追いつけるのは、この場ではウィンクルムしかいなかった。
娘が出て行った扉を見つめ、プレシアはウィンクルムとコーラルを信じ、足を止めた。アリシアも、プレシアも、アルヴィンも、3人とも一度落ち着く時間が必要だと感じたからだ。いつの間にか、完全に蚊帳の外にほっぽり出されてしまっていて、内心かなりあわあわしていたプレシアだが、すぐに思考を切り替えた。
こうして、テスタロッサ家―――改め、テスタロッサ兄妹の大喧嘩は起こったのであった。
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