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少女1人>リリカルマジカル
第五十一話 思春期D
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と―――」

 ぽろぽろと涙を流すアリシアに、口を噤んでいたアルヴィンが慌てて声をかける。少女に向け、駆け寄ろうとした身体は、その少女が発した言葉によって止まった。

「どうして、……どうしてお母さんやお兄ちゃんと、おんなじようにしてくれなかったのッ! なんで私には、みんなと一緒のものをくれなかったの!? お母さん、は、なんで私だけッ、こんな風に産んだのッ!!」
「―――アリシアッ!!」

 錯乱しているのはわかっている。だけど、これ以上言わせてはいけない。感情が制御できていない彼女をこのまま放っておいたら、後で彼女は必ず傷つく。アリシアという少女の優しさを知っているから、アルヴィンは怒鳴った。初めて、妹に向けて、声を荒げた。


「アルヴィン、待って。アリシアは私が―――」

 プレシアは初めて見るアルヴィンの姿に驚きながらも、諌めるように話す。アリシアの怒りは当然だと思っており、それを受け止めるつもりでここにいたからだ。傷つくことも、傷つけてしまうことも、その後のことも、全部含めて。アリシアが大切だからこそ、選んだのだから。

 そしてアルヴィンもまた、プレシアにとって大切な存在だった。2人をお互いに、傷つけさせる訳にはいかない。まだ息子の方が、落ち着く可能性が高いと考え、プレシアは宥めようとしたが。

「……どうして、お兄ちゃんばっかり」

 アリシアの目は、真っ直ぐにアルヴィンに向けられていた。


「―――ずるい」
「えっ…」
「お兄ちゃんばっかり、ずるい! どうしてお兄ちゃんばっかり持っているのッ! どうして私には、お兄ちゃんとおんなじものがないのッ!?」
「……ッ」

 アリシアの言葉にアルヴィンは、言い返すことができなかった。いや、言い返す言葉がなかった。アリシアの言葉が、紛れもない事実だったから。彼女が自分を責めることは、間違いではないと思ってしまったからだ。

 この世界を知って、この世界で生きて、自分がどれだけ恵まれているのかを知っているから。そしてこの世界は、自分の力で手に入れたわけじゃないから。

 アルヴィンがいなければ、アリシアはここまで傷つくことはなかった。自分という存在が、魔法に触れさせる原因を作ってしまったことが、妹を追い詰めてしまった。そこまで考えが至り、アルヴィンは唇を震わせる。血の気が引いたように、表情が凍った。


「―――っあ」

 いつも笑顔でいてくれた兄の怒鳴り声に、頭に血が上ってしまったアリシアは、蒼白になったアルヴィンをみとめ、ようやく意識を繋げた。母親に叱られても、友人に呆れられても、どんなことがあっても、崩れることのなかった笑みが……消えた。

 それにアリシアは、声をかけようとしたが、言葉になることはなかった。意識が戻っても、
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