番外9話『火拳で危険』
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ろそろ降りる準備を。
そう考えて動き出そうとして、首をめぐらせたときにビビが目に映った。
自分と同じように笑みを噛みしめているその姿は他人事であり、だが他人事ではない。
――もしかして俺と同じような感覚かな?
ビビのこれまでの経緯を聞く限り、自分の考えは当たらずとも遠からずといったところだろう、とハントは考える。
自分と同じ感覚の人間がいることに、無性にうれしくなったハントはほとんど反射的にビビの肩をたたき、左腕の包帯を自慢げに見せる。
「……?」
いきなり肩を叩かれて首を傾げたビビだったが「これ、いいよな」というハントの言葉に弾けるように頷いた。
「とっても!」
ハントとビビが笑いあう。
最初は遠慮がちだった微笑みが徐々に満面の笑みへと変化し――
「――ハント!」
「いてっ!」
「ほら、あんたもさっさと準備する!」
「お、おう……ご、ごめん」
ナミに殴られて少しだけ涙目になるハント。
「……ふふ」
それもまた、ビビにとっては笑顔がこぼれることだった。
アラバスタの港町『ナノハナ』の外れ。
そこで、彼らは海賊然たる人相や恰好をカモフラージュするための服装を用意し、そしてアラバスタの砂漠を越えるための物資を補給していた。ナミやビビの恰好が踊り娘衣装なのは買い出しに行ってきたサンジの趣味全開の結果で、肌の露出が多いため砂漠を歩くには実用性がなさすぎるのだが、ビビのその指摘にもサンジは目をハートに輝かせて「大丈夫」と言い張るのみで一向に聞く気はないらしい。
女性の対して人並み外れて衝動的なサンジらしいといえばサンジらしいが、彼以外にももう一人、ナミという女性に対しては鼻の下をのばすこと請け合いの人間がいる。
「……」
もちろん、いうまでもなくハントなのだがそのハントの様子がおかしい。踊り娘衣装のナミに目を奪われることなく、それどころか真面目な顔をしてつぶやいた。
「……ルフィ、遅くないか?」
「……」
その言葉に、全員が一斉に口をつぐんだ。
現在ここにいないルフィはアラバスタ特有のメシを腹いっぱいに食ってみたいという欲求に駆られて一人食事処に行っている。ハントの加入により台所事情は随分と緩和された麦わら一味ではあるが、ルフィの胃袋には際限がないらしく、どれだけの大物をハントが狩ってこようと一日たてば骨しか残らない。ルフィ以外の人間は空腹を覚えることのない航海生活をしているが、いかんせん限界があるのかすら疑わしいルフィの胃袋までは賄えきれていない。天候や海路の状況から海に潜らない日もあるので、なおのことだ。
そういうわけでルフィは今日も今日とて食事を求めて一人で行ってしまったわけなのだが、なかな
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