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打球は快音響かせて
高校2年
第十五話
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な理由ではないかもしれない。が、翼はその気持ちを理解できる気がした。
そして、京子がマネージャーという裏方の仕事に一生懸命な理由も分かった。京子は、三龍を「強くする」つもりで居る。

「宮園とさ、小さい頃からの付き合いだったんだろ?あいつってさ、小さい頃からああだったの?」
「どういう事ですか?」
「いや、どこかひねくれてて冷めてるんだけど」

京子はムッとした表情を見せた。
翼は、幼馴染をディスるのは軽率すぎたか、と少し後悔した。

「光は…宮園さんは元々、普通に明るい人でしたよ。少し大人びてはいましたけど。兄貴が3番、宮園さんが4番、リトルリーグの頃はそうだったんですけど、中3にそれが逆になってから、突然冷め始めて…で、家の近所の商学館の誘いも蹴っちゃったんです」
「……」

翼は入学直後に宮園から聞いた言葉を思い出す。
「ま、俺も中途半端なヤツだって事だな。」
幼馴染に実力を追い抜かれた事から、あの自嘲の考えが始まったというのは想像に難くない。
今ではその幼馴染は、甲子園出場校の4番を打っている。そもそもが尊大な奴だから、この状況は中々に認め難いのではないだろうか。

「まぁ、安心して下さい」
「え?」
「宮園さんはこのままでは終わらせませんから。あたしが何とかします。」
「で、でもなぁ、何とかするって一体…」
「それは今から考えます。」

洗濯機がピーと音を立てる。
京子の洗濯物が出来上がったらしい。
洗濯機の中から洗濯カゴに衣服を移し替え、京子は翼に一礼した。

「あたしはお先に失礼します。お休みなさい。宮園さんの心配より、ご自分の心配して下さいね。調子が良いとは言え、B戦での話ですし、球種も少ないですし、フィールディングが」
「分かった。分かったよ。明日聞く。もう早く休みなよ。」
「では。」

京子の刺々しい言葉をまたまた受け流して、翼は自室に戻っていく京子の背中を見送った。

(こうして見ると、ちっちゃいのになぁ。)

面と向かって話している時の京子は大きく見える。

(目標があるからな。そして京子は、その目標の達成を信じてる。まっすぐに。)

洗濯場に翼は1人残された。
ゴトゴトと、洗濯機の音が響いていた。




ーーーーーーーーーーーー



スパァーン!
「よしっ!」

翼はいつもの癖、左の拳をぐっと握ってマウンドを勢い良く駆け下りる。翼の得意コースは左投手にしては意外にも一塁側の真っ直ぐ。
たった今投げ込んだように、結構な頻度でこのコースには指にかかった球が決まる。
しっかり前で力を伝えてリリースする事。
浅海の指導により、自然と腕が前に伸びるこのコースが得意になった。左の代名詞であるクロスファイアーは、最初からそれを練習す
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