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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
序章 シャングリ・ラの少年
16.July・Night:『The Dark Brotherhoods』
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んたがバカなんだろ?」
「だいじょうぶ、非常識で空気が読めなくても死にはしない」
「死ぬほど恥ずかしい訳よ!」

 それを見送ったフードの少女は、『あ〜、赤っ恥を掻いた』と喚いて衆目を無駄に集める金髪少女を尻目に。

「……超、人違いですね。本当に『彼』なら、超死んでもあんな事は口にしませんし」

 一人、そう結論付けて。姦しい三人組とは他人を装いながら、後に続いたのだった。


………………
…………
……


 小さな路地の奥地にスクーターを停める。まず警官など入ってこない場所なので、一先ず路駐させて貰う。
 目の前には、小さな店。明治初期の西洋建築のような見てくれの、知らなければ営業しているとは分からない喫茶店。屋号は、錆び付いたブリキの看板に辛うじて、『ヅッファザラブ・クァダ 茶喫純』と左読みの文字……即ち、『純喫茶 ダァク・ブラザァフッヅ』の屋号が読み取れた。

 その樫の木の扉を開ければ、年代物のドアベルが来客の報を主に伝える。

「今晩はです、ニアルさん」

 これまた年代物の鈍い金の蓄音機に掛けられたレコード盤からしっとりとしたバラードの流れるカウンターの奥から、煙草を燻らせながら英字新聞に目を通していた黒髪の男性『ニアル・ラトフツプ』が此方を見遣る。

「おや……これは、コウジくん。いらっしゃい」

 低く、落ち着いた重厚な口調。さながら、時を経たサックスの音色をイメージする、色気に溢れたその声。

「今晩は。君がここに来ると言う事は、何か入り用ですか?」

 国籍不詳の瀟洒な洋風の服装の色黒の男性は灰皿の縁に煙草を預け、ソーサーに乗ったカップから立ち上る芳しい香りの珈琲を一口啜り、燃えるように赤い瞳を穏やかに微笑ませた。

「いえ、今日は普通に珈琲を飲みに。ホットで一つ」
「そうですか、流石に君は運が良い。実は、良い豆が手に入りましてね……」
「ハハ、来た時からその珈琲の香りに気を取られっぱなしですよ」

 軽口を交わしながら、カウンター席につく。チラリと目についた英字新聞のタイトルは、『アーカム・アドヴァタイザー』。日付はなんと、1920年代。『ダンウィッチ』とか言う村で村民が家ごと押し潰された上、血を一滴残らず吸われて殺される怪事件が起こっているとかなんとか。それを解明すべく、なんとか大学のかんとか博士が調査に乗り出したとか。まぁ、百年も前の事件、既に解決しているだろう。
 他の客はいつも通り見当たらない。経営が立ち行くのかと不安になるのだが、三年ほど経った今も平然と営業している。

嗚呼(ああ)、そうでした。豆以外にも、コウジくんに見せたい物があったんでした」
「え、なんですか?」

 因みに、此処は喫茶店以外にも『何でも屋』としての側面も持っ
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