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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
序章 シャングリ・ラの少年
16.July・Night:『The Dark Brotherhoods』
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な」
「あはは、確かに」
「御坂さん、そこは笑うところじゃないよね?」

 棒アイスを齧って笑う美琴、それにより露出した棒先には、『あ』の文字が既に見えている。

「バンクには載ってないけど、『一定範囲』ってのが俺の届く範囲……大体直径百八十センチ、しかも100%と0%は『流動しない』から不適用。発動条件には『事象を認識していること』が含まれてるから、意識してない事柄とか理解できない事象にもやっぱり不適用。更に『超能力(スキル)』に干渉する場合は、演算能力の競い合いになるんだ。ホント、使い辛いクソ能力だよ」

 と、アメリカンに肩を竦める嚆矢の棒先にも『あた』の文字。しかし実際、費用対効果(コストパフォーマンス)が悪過ぎるのである。

――そもそも、この能力は自分だけの現実(パーソナルリアリティ)の基礎の基礎。他の能力者は無意識下で発動しているものだ。しかも、100%の成功率。マジで。
 だけどこの能力、ある意味では重宝してる。他人には説明できない、というか、もしそんな事を言ったら『厨二病(お年頃)』か『本格的な病気』だと思われてしまう方面の事柄で。

「何だかわかる気がします……私の『定温保存(サーマルハンド)』も、触らないと効果がない能力ですから」
低能力者(レベル1)、だったっけ。やっぱり、熱すぎたり冷たすぎたりしたら?」
「はい、触れなくなっちゃいます」
「仲間だ」

 がしっと、飾利と握手する。『触れたものの温度を一定に保つ』という能力を持つその手は、小さく柔らかく。そして温かかった。

「と、そうだ、佐天ちゃん。頬の怪我、大丈夫?」
「あ、大丈夫ですよ。現場で警備員の人に見てもらってますから。傷も残らないそうですし……って」

 そう言って、頬の絆創膏に触れる涙子。その絆創膏に、嚆矢も手を添える。

「――白樺(ベルカナ)

 そして呟く言葉。左手に握るラビッツフットの文字は、ダークブルーの『尖ったB』。
 体を襲う、風邪引きの時のような倦怠感。それを押さえ付け、手を離した。

「え、えっと……?」
「ちょっとしたお呪いだよ。痛いの痛いの飛んでけ的な」

 大分驚いたらしく、硬直している涙子。それを、お道化(どけ)た様子で茶化す。

――まぁ、簡単に言うと……俺は、超能力以外にも『魔術』を使える。得意なのは『ルーン文字』、刻んだ刻印を特定の色に染める事で行使できる魔術だ。
 因みに、今、佐天ちゃんに使ったのは『癒し』の効果を持つルーン。

「び、びっくりした〜……」
「ごめん、一言断るべきだったな……」

 少し反省、謝罪を行う。勿論、下心はなかった……筈である。何せ、『女の子に優しくする』のは彼の『誓約(ゲッシュ)』なのだから。

「……
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