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渦巻く滄海 紅き空 【上】
三十一 黄昏
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の空に、自来也は目を細めた。

「コインとて裏表ある。同様に、人間が二つの顔を持っていても何等おかしくはない。そうは思いませんかのぉ…三代目」














太陽はとうに沈んでいた。千変万化に移り変わってゆく空。
里は影を成し、明暗がくっきりと地平線で区切られる。やがて深まる夜の気配が街を呑み込まんと迫っていた。

残照に映える一軒宿。格子窓からそっと外を覗く。片膝を立て、窓枠に腰掛けたナルトは太陽が沈む様をじっと眺めていた。天と地の一線を画する鮮烈な赤が彼の髪を琥珀色に染め、憂いに満ちた横顔をほんのりと色づける。

「ナルト」

物思いに沈んでいた彼を現実に呼び戻したのは、今の今まで散々文句を並べていた再不斬だった。
「ったく…。寿命が縮むかと思ったぜ」
三忍の一人、自来也との対峙について文句を並べていた再不斬は、ナルトの顔を見るなり不平を言い立てた。


それぞれの目的を果たした双方は、根城としているこの宿に今し方帰還したばかりであった。波風ナルとの接触を試みるナルト。その間、ナルから自来也を引き放す再不斬。そして彼に従う白・ドス・キン。
新たに仲間となった香燐は宿で待機し、【神楽心眼】で超広範囲に及ぶ索敵術を行っていた。自来也の足止めを再不斬が失敗した場合、【念華微笑】の術でナルトに警告する役割を担っていたのである。
三忍の一人・自来也との会話は、再不斬にとって冷や汗ものであった。戦闘狂染みた彼でさえも、三忍との闘いは避けたかった。しかしながら祈り叶わず、あわや闘う寸前まで再不斬は追い込まれた。ナルトのように話し合いだけで切り上げるつもりだったのだが、予定が狂ってしまったのだ。


「交渉なんざ俺には土台無理な話だぜ。お前と違ってな」
「………俺も苦手だよ」
「嘘つけ」

予想外の人物が介入した事で、なんとか危地は脱したのだが、どうにも釈然としない。八つ当たりのように「おい、聞いてるのか」と棘を孕んだ声で息巻く再不斬。
だが何時に無く物憂げなナルトの様子に不安を覚え、「どうした?」と逆に気遣いの言葉を掛けた。

「上手く接触出来なかったのか?小娘に会うのが目的だったんだろ?」
「いや…。会えたよ。会って、話もした」
ナルトはそれきり口を噤んだ。再不斬は無理に話を聞き出そうとはしなかった。しかしながら室内を満たす沈黙が、言葉の先を促していた。

「しかし。怪我の功名でしたね」
ナルトの様子を見取って、白が口を挟んだ。
「あの水月という少年のおかげで三忍と闘わずに済んだんですから」
「チッ」
不貞腐れた表情で再不斬は舌打ちした。実際白の言う通りなのだから余計苛立ちが募る。
一方の香燐もまたナルトを弁護したかったが、未だ仲間になったばかりの彼女に
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