三十一 黄昏
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「みたらしアンコ特別上忍の証言もありますし、私自身奴に会いました。間違いないでしょう」
カカシの進言に、自来也の飄々とした雰囲気が消え失せる。三忍と呼ばれるに相応しい精悍な面立ちで、彼は火影の顔を見遣った。
「かと言って、中忍試験を中止するつもりはないのだろう。猿飛先生?」
確信めいた自来也の言葉に、「既に各国の大名達や忍び頭が挙って里に来ている」と火影は重々しく頷いた。
「『伝説の三忍』だろうが抜け忍は抜け忍。それもたった一人のために試験を中止など、里の沽券に関わると言うもの。……今更取り止める事など出来まい」
「だろうのぉ」
「じゃが、大名や要人達を危険に晒すわけにもいくまい。勿論里人にもじゃ」
「では…?」
火影の言いたい事を即座に推し量る。彼の次の言葉をカカシは聞くまでもなく理解していた。それでもあえて、話の続きを促す。
「里の警戒を厳重にしろ。実際に再不斬のような抜け忍が潜んでいる今、事は一刻を争う。アカデミー生や下忍を除いた忍び達に召集を掛けろ。常に二人一組を原則とし、市街を巡回せよ」
命令を下す。厳然たる態度で火影は告げた。
跪き、了承を返したカカシは、はたと思い当る。わざわざ二人一組とした火影の意図に気づいたのだ。
「それは動員令ですか?ならば木ノ葉病院での監視にあたっている忍びも召集致しますか?」
一人で夜の里を警邏していたために意識不明の状態で病院前に倒れていた忍び――月光ハヤテ。万が一の事を考えて彼の病室を監視するよう指示していた火影は、ふむと思案顔で顎を撫でた。
「意識が戻り次第何があったか訊こうと思っておったのじゃが…。目覚める傾向すら見えんのじゃろう?ならば仕方あるまい。忍びの数にも限りがある」
監視を取り下げ、里の警備に徹しろ。その命を、何時に無く険しい表情でカカシは拝した。一礼し、すぐさま執務室を後にする。
カカシの気配が遠ざかっていくのを確認しながら、自来也は火影の傍へ歩み寄った。
執務室の中でも際立って大きな窓。里を見渡せるその一角から外を覗くと、夜の帳が刻々と降りてゆくのがわかる。赤紫と化した里を見渡しながら、自来也は何気なく呟いた。
「里にいる忍び全て、信用出来るのかのぉ…」
決して独り言ではないその呟きを背中で受ける。自来也に、火影は無言を返した。
「敵は外だけではない。内にいる可能性もある…。情けないが、今回の件で身に沁みた」
「里の者は皆、家族じゃ。わしは家族を信じておる」
「果たしてそうかのぉ…?」
訝しげに火影は自来也を振り仰ぐ。非難染みた視線を受けながらも、自来也は言葉を続けた。
「先生のそういうところ。美点でもあるが欠点でもある。信じすぎるのも考えものだと思うがのぉ…」
風が木々を掠め、唸り声を上げる。様々な色合いを織り成す黄昏
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