従うモノ達の願いは
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威風堂々と言った様相で進む部隊は、その数にしては纏う空気が異質過ぎた。たった二千と数百であるのに、一万……否、二万の軍に匹敵する程の威圧感。
翻る黒き旗と追随するモノを見た旅人も民も、全ての者がそこに希望を向ける。
あれこそ勇者の軍であるのだ。あれこそが無敵の軍勢なのだ、と。
先頭にて馬を進める三つの存在に向けられるのは、追随するモノ達からの信頼と敬愛。
一人は、その部隊を最初期から纏めてきた双つと無き副将。名を周倉と言った。しかし部隊の誰もがその名を呼ぶことは無く、一人の例外なく少しの畏怖を込めて違う名を呼ぶ。
『副長』……それは彼の片腕であり、自分達とは似て非なるモノである証。
どれだけ努力をして、どれだけ死線を潜り抜け、どれだけ誰かの事を考えているか。そこには絶対的な差があるのだ。
最古のモノ達はその異常な努力を間近で見てきた。そして引き摺られるようにその姿に追いつこうと努力した。
義勇軍時代からずっと……副長は地獄のような訓練の後に己が御大将と一騎打ちを繰り返してきていた。血反吐を吐こうと、練兵場で死んだように眠ろうと、毎日、毎日、彼に重要な用事のある日は早朝に、休むことなく。
ただの兵士であったはずの男は長い時間を掛けて、その凡才を叩き上げてきた。身を刃と化して鋭く研ぎ澄ましてきた。今では彼に幾太刀か浴びせ掛ける事が出来る程になっていた。
だからこそ、兵士達は副長に憧れる。平凡な男が彼に近付いていく姿に、彼に片腕と言わしめる程に支えられる存在になっていく事に希望を見出し、その言葉を疑う事は無く、彼になれないならばせめて副長のようになりたいと願うのだ。
この世界では男が女の武将に勝てる程の力を持つ事は無いのは周知の事実。ただ一人の例外を除いて。
兵士となった男であれば、誰しもが望んだ事をその例外は示してくれた。
『あの誇り高く、美しい武将達を守りたい』
それが出来る可能性を見つけてしまうと、男であればプライドを擽られぬはずが無い。
――何故、我らには出来ないのだ。彼には出来ているではないか。同じ男でありながら、彼だけは守れているではないか。
詰まる所、彼らはバカなのだ。男が守られるなど許せない、という想いの強かったバカ。俺達は守る側なのだと誰しもに示したい極上のバカ共である。
秋斗ですらそれは知らない。大徳の名が売れる前から所属していたモノ達のプライドからここまでなった事は副長以下の徐晃隊しか知らない。
しかし、初めは下らない自尊心からだとしても、彼とその影響を受けた副長が居る事によって変わっていく。
秋斗と副長に憧れ、着実に力を付けて、命を賭けた戦術で守る事が出来るようになっていったから変わっていく。
守れるとなれば欲が出る。もっと、もっと多くを救いたい、
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