従うモノ達の願いは
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瞬時に、返事をせずとも、徐晃隊は三つに分かれ始めた。
弦の跳ねる音が一斉に丘に鳴り響く。まるでイナゴの群れのように空を埋め尽くした矢は、その部隊へと注ぎ込まれるはずだった。
しかし上がった速度によって届かず、さらには部隊が別れた事によって照準が安定せず、第二射もほぼ全てが大地に突き刺さる。
黒い影が踊り出す。振り返ることなく、ぐんと新緑の部隊から突出した影は、日輪の輝きを受けて一筋の光を敵兵に見せつけた。月光だけはその速さをさらに上げていた。
見やると敵は槍の部隊であった。先の二回のように正面からの矢による直射であれば、部隊だけでも脚を止められたであろう。
当然、月光へと突きだされた槍は一太刀でゴミと化し、返しの刃で三つの頸が宙を舞う。
紅い華が咲き誇る。遅れて、化け物の部隊は金色の兵を次々と平らげて行った。
敵兵はその姿に恐怖した。命を捨てるも覚悟の上で、ただ前へ前へと進む部隊に。それは彼の地での戦の再現のようであった。
ただ……今回は黒麒麟に追随する仲間はおらず。
袁紹軍の槍兵は後背へと回り込むことなく、喰らわれながらも徐々に、徐々に下がっていく。まるで何かに引き付けるように。遅れて辿り着いた敵兵もわらわらとその先へと向かい行く。
そして後背へ回り込むのは――弓兵。
数本の矢がその化け物に突き刺さった。さらに数本の矢が突き刺さる。にやりと得物を仕留めた事で笑みを深める袁紹軍の兵は、止めとばかりに次の矢をつがえようとしたが……その手を止める。
視線の先では、矢が背に突きたった徐晃隊員がクルリと反転して大地に剣と槍を突き刺し……その場で正面から数多の矢の的となって息絶えた。
幾人も、幾人も、同じようにハリネズミとなって死んでいく。彼らは決して倒れる事無くその場に立ち続けた。
ゾワリと肌が泡立ち、恐怖に震えたのは矢を放った兵達全てであった。笑みを携えて立ったまま死んでいるその姿は彼らを恐怖に落とし込む。
その弓兵達も、周りの弓兵達も、もはや暫らく使い物にならない。手が震え、狙いを定める事が出来なかった。脚が震え、芯を持つ事が出来なかった。
恐怖は伝搬する。
先を戦う袁紹軍の槍兵も、剣兵も、全ての兵が徐晃隊という化け物に恐怖の底に落とされていた。
美しい舞のような連携。どれだけ槍を突きだそうと、どれだけ剣を振ろうと弾かれ、隣から来る返しの刃で突き殺されてしまう。
大きな体躯に守られて、視線を合わせたモノを全て凍りつかせるような瞳で、纏わりつく軍の弱所を見定め指示を出す鳳凰によって、化け物部隊は変幻自在の動きを見せていた。
少しでも躊躇えば雪崩のように押しかけられ、どうにか突き崩そうと攻めても重厚な兵列配置によって即座に防御される。
今、黒麒麟の身体たる徐晃隊は鳳
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