従うモノ達の願いは
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た分岐点。選んだのは丘中の道であった。
警戒を怠らずに進んで行くと、先程逃げた兵であるのか、それとも別の部隊であるのか……彼らの後背に旗の多く立ち並んだ部隊が現れたと、馬を持たせて後ろを監視させていた兵からの報告があった。
それを受けて、当初の計画通りに行軍の速度を速めて最初の丘の上に昇りきった時、秋斗と雛里は息を呑んだ。
眼前に見えるのは郭の旗の元に集う……少ない兵士達。それだけならば問題は無い。
左にも、右にも、逃げ場を塞ぐように幾多の陣が据えられていた。まるでここから逃がさないというように。
遠くで、陣の中で膝を組みながら郭図が嗤う。
「クカカ! こっちを選ぶと思ってたぜぇ? 少ない数でようこそ黒麒麟。歓迎しよう、盛大になぁ! 癪だが田豊の策で追い詰めてやんよ! 銅鑼を鳴らせぇ! 十面埋伏の計の始まりだ!」
日輪が中天から傾く丘に銅鑼の音が鳴り響く。大きな金属音が幾重も木霊する。同時に、全ての陣から敵兵が挙って出撃を開始した。
後背からも部隊が近づく砂埃が見えていた。雄叫びを上げながら、丘の上からは見えない左右の場所からも兵が走り込んできていた。最後に最前方の少数だと思っていた場所が一番多くなった。
合わせたその数、目算で一万二千。対して、徐晃隊の数は二千まで減らされていた。
袁紹軍は、否、夕は思考を読み、細かい兵の配置を事前に行った分岐先の限定によって丘中の道を選ばせた。全ての兵はここに配置され、もう一つの道はもぬけの殻である。戦略思考では雛里よりも彼女の方が上であったのだ。
戻る事も出来ず、彼らが向かう道はやはり一つしかない。
大きなため息が漏れ出た。徐晃隊の全てはそれが呆れから来るモノである事を知っていた。不敵に笑った秋斗は冷たい声を上げる。
「クク、なんでお前が十面埋伏陣を知ってんだよ。副長、雛里は任せたぞ。……なあ、お前ら! 十倍もいかない包囲網なんざ俺達の敵じゃあねえだろうよ! 前だけを、ただ前だけを見ろ! 真ん前のど真ん中を……俺と共に貫け徐晃隊!」
それだけで敵を殺す程の雄叫びが上がる。同時に、一つの生き物のように彼らは駆け出した。
秋斗を先頭として、雛里を乗せた副長の部隊を右に配置したそれはまさしく黒麒麟の如く。
ただ、正面は遠すぎた。そしてここは丘である為に徐晃隊は不利な場所へと追い詰められる事となってしまった。押し寄せる敵兵達はある程度の距離を以って、半数だけが次々と脚を止めて行く。突撃に向かうモノは変わりない、しかし……残りは弓を構えて行った。
キリキリと引き絞られる音が聴こえていたかのような絶妙な時期で、秋斗は声を張り上げた。
「矢が来るのなんざ分かってんだよバーカ。速度を上げろ! 届く前に駆け抜けろ! 後方分離、左右展開! 接敵後、後方追随
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