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乱世の確率事象改変
従うモノ達の願いは
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瞬間、わっと歓声が上がって俺と雛里はどちらとも無く顔を離す。

「鳳統様! おめでとうございます!」
「いや、ほんと鈍感過ぎだろって話だぜ! 鳳統様を幸せにしねぇと承知しねぇからな御大将!」
「なんか娘が婚儀を上げた気分なんだが」
「よっしゃあ! これで御大将は幼女趣味って堂々と言いふらせる! ……うわっ、これじゃゆえゆえとえーりんもあぶねぇ!」

 口々に祝いの言葉、というよりも茶化しの言葉を投げて来て、恥ずかしさからか雛里は俺の胸に顔を埋めてあわわと呟いた。
 一寸だけ、がやついていた徐晃隊の者達であったが、突然グッと、副長がバカ共に向けて親指を立てた拳を突きだす。
 それを受けて徐々に静まり返った徐晃隊は、副長がもう一方の空いた手で同じように拳を突きだすと一斉に、グッと拳を突きだした。

「これで思い残す事はねぇだろう! 俺達の心残りは晴れた! 黒麒麟に祝福を! 鳳凰に永久の幸あれ!」

『黒麒麟に祝福を! 鳳凰に永久の幸あれ!』

 自分達は平穏な世の幸せな姿を見れない。それでも願ってるから、届けてやるからと。
 奴等の想いが胸に響いて少しだけ涙が滲んだ。なら、俺に出来る事は一つだけ。
 雛里を片手で抱きしめて、いつものように不敵に笑い、背中からスラリと剣を抜き放つ。
 すっと掲げて天を突き、見据えるモノに命令を下した。

「我が身体たる徐晃隊に命ずる。命を賭けて鳳凰を守りきれ。助かれとはもはや言うまい。俺達の願いの為に戦い、俺達の願いの為に死ね。想いは俺と雛里が繋げて、多くの人々を救ってやる。だから安心して先にあの世で待っていろ」

 応と、重苦しい声。ほんの少し涙を流して、笑顔を向けながらの。
 雛里は涙を流しながらも笑っていた。きっと……自分の為に死ぬあいつらに、笑顔を残しておきたいからだろう。
 俺達の力が足りないかったからこいつらは死ぬ。
 俺達の自分勝手な理想の為にこいつらは死ぬ。
 初めの戦からずっと戦ってきた戦友も、幸せを願ってくれる友も、俺達の為に切り捨てる。
 心に重く圧しかかる重責はいつもより幾分か軽かった。
 前を向いて、歓喜に溢れる徐晃隊の視線を背中に浴びながら、俺は何故か一番初めに決めた覚悟を思い出していた。


 †


 しばらく行軍する内に、物見にやった兵から、崖の道から敵兵が来たとの報告で第二の戦闘が開始される。
 敵の数は五千。先程のように弓の部隊を前衛に。
 次は逃走の時機を早めるだろうと見て、雛里の指示によって徐晃隊は同じ行動を起こす事も無く、秋斗を先頭に置いた蜂矢陣での強制突撃によって大打撃を与える事に成功する。
 異常なまでの士気の高さに恐れた袁紹軍は逃げる兵が続出し、急ぎで撤退していった。
 休むことなく行軍を続けて遂に辿り着い
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