従うモノ達の願いは
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き付けておかなきゃ安心できねぇんだ。先に死んだ奴等への土産話にも出来るんで……月光の上で、御大将と鳳統様には平穏な世の為に誓いの口付けでもして貰いたい」
あんぐりと、口を開け放って驚くこと数瞬、俯きながらふるふると雛里が震えだしたのが伝わって漸く思考が回りだした。恥ずかしくて雛里の体温が上がったのか抱きしめてる腕が熱い。
「で、出来るわきゃねぇだろうが! しかもこんな戦のど真ん前で!」
「おんやぁ? じゃあ既に口付けはしたって事ですかい? つまりそういう関係になってるのは認めると」
真後ろを歩いていた一人が目を細めて言った一言で俺の顔が熱くなっていくのが分かった。
言い当てられて言葉に詰まってしまい、隣の一人がその隙を逃すまいと口を挟んできた。
「はい確定ー。もう逃げられやせんぜ御大将。なぁ皆! ちゃんと見せてくれねぇと俺たちゃ死んでも死にきれねぇよなぁ!?」
後ろを振り向きながら大きな声でそいつが言うと、全員がうんうんと一様に頷き、それぞれが楽しそうに、否、意地の悪い顔で俺を見てきた。
後に、ポンと副長に肩を叩かれ、
「漢を決めろ、御大将」
このバカもうんうんと頷きながら言ってきやがった。
雛里を見ると……じーっと、俺の事を涙目の赤らめた顔で見つめていた。ここで本当にするんですかと、そう言うように。
ここまでお膳立てされ、味方のバカげた策に嵌められ、何もしなければ男として終わってしまうのも事実。しかし何よりも雛里が嫌がる事はしたくない。
だから耳元で小さく問いかける事にした。
「雛里、お前が嫌ならバカ共を抑え付けてやる」
ただ、申し訳ない事に、
「でも……ごめん、正直俺はしたい」
欲望には勝てなかった。
身体を離すと、ぎゅっと目を瞑って恥ずかしさから震える身体の前で祈るように手を組んで、
「あぅ〜……は、はじゅかしいですが……いいですよ」
小さく答えを口にした。
これから決死の戦場に向かうというのに、真剣な空気は何処へやら。
囃し立てる徐晃隊のバカ共の声を聞きながら、雛里を抱き上げつつ身体をずらし、皆によく見えるよう横向きに月光の上に座りなおすと、何故か相棒も急かすように嘶いた。
幾多のにやけた視線が集まる。
先程とは打って変わって驚くほど静かに俺達二人を見つめていた。
うるうると、涙を溜めた上目使いで俺を見やる雛里と視線を合わせ、彼女がゆっくりと目を閉じるのを合図に、ドクンと心臓が大きく跳ねた。
――結婚式の誓いの口付けもこんな感じなんだろうか。
的外れな考えが浮かぶも頭の隅に追いやって、跳ねる心臓をそのままに彼女に顔を近づけて目を閉じる。
そうして、ゆっくりと、俺は雛里に口付けを落とした。
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