暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
従うモノ達の願いは
[11/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
凰の翼に守られていた。
 そして一番の恐怖は……黒き体躯に白き角、立ちふさがるモノを全て薙ぎ払うその名の通り黒麒麟の存在。
 まさしく、格が違う。草原に揺蕩う草のように薙ぎ払われ、あぜ道に咲く彼岸花のように紅く彩られる。
 近づけば殺される。その恐怖は決死の覚悟を持つモノでしか立ち向かえない。袁紹軍にはそれが無かった。
 それでも、数というのは何者にも勝る強さである。
 徐々に失速していく速度。原因は敵兵の並び方にあった。
 一列に並んだ正面、左右はより強固に、隙間なく固められた兵列。それが幾重にも重なった隊列は如何な徐晃隊と言えども容易に抜くことが出来ず。
 この兵力差で、下がりながら増える敵兵に対して未だ速度を落としながらも進んで行けるのは秋斗が先頭を切り拓いているからに他ならなかった。


「化け物が……張コウの部隊よりも厄介じゃねぇか。このまま部隊を引き攣れたままにされると押し切られるか。
 伝令だ。あの場所まで引き込め。相対してる奴等にはいなすように動かせろ。抜けた瞬間に『鳴らして』合図してやれ」

 遠く、陣の上から戦場を見渡していた郭図の判断は早かった。
 既に戦闘が始まって三刻。たった二千の兵に食い散らかされる自軍の兵にも心動かさず、この程度は問題ないとばかりに次の策に移っていた。
「成功しようが失敗しようがどうでもいい。俺でも敵将を捕えられる事が出来ると証明出来れば最善、黒麒麟を逃がせば田豊の名が傷つくから最良。
 殺しちまうのは鳳統だけでいい。ま、化け物部隊を失った黒麒麟はただの武将だ。さらにこれだけ疲れさせりゃ追撃させる文醜でも勝てるだろ」



 †



 剣戟の音。怨嗟を張り上げる断末魔。宙に舞い散る血霧。
 地獄のような戦場はどれだけ続けても終わる事が無いかに思えていた。
 重厚に敷き詰められた兵の肉壁によって俺の戦う正面からしか広げられず、戦いながら振り向いて確認すると徐晃隊の面々は三分の一の数が失われていた。
 さらには、ある時期を以って敵兵の並び方が変わっている。
 横を増やし、前を減らしている。何処かへと誘うように。
 間違いなく、このまま進めば罠が待ち受けているのだろう。
 俺の体力も無限では無い。今動ける内に少しでも進んでおかなければならないのも事実。ならば――

「徐晃隊全てのモノに告ぐ! 俺の抜ける先、紅き道を作り出せ! 今より我ら一つの槍とならん!」

 その指示は駆け抜け重視の攻撃主体に切り替えるモノ。体力がギリギリ持つかどうかを見極めて、抜けきる為に行う最後の手段。
 最初から最後まで走り続ける事は出来ないのだから、道を開きつつ着いてこれるように、俺だけは最初から全速力で駆けていない。雛里を生き残らせる為には必然の行動だった。
 月光の
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ