七十一 月の砂漠
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振舞いは止めろ」
『木ノ葉崩し』における一尾と九尾の戦闘の際、ナルトを見張っていたゼツを仮面の男は峻烈に咎めた。瞋恚の眼でじろりと睨まれ、ゼツは木に潜んだまま、ぶるりと身を震わせた。
完全に気圧された風情の左半身に代わり、右半身が「ダガ…イイノカ?」と若干狼狽しつつも訊ねる。相方の言葉に気を取り直したのか、左半身は猶も言い募った。
「そ、そうだよ!イタチの件だって…」
「しつこいぞ。今後ナルトの行動に一切口を出すな」
言い淀むゼツの言い分をはねつける。頑なにナルトへの信頼を崩さず、「二度と監視などするなよ」と仮面の男は念を押した。
ナルトが立ち去った方向に視線を投げる。既に姿形もない彼の痕跡を探すように、仮面の奥で細められる双眸。ゼツの心配を余所に、一言「それに、」と付け加える。
「ナルトが言ったのなら、間違いはない」
ナルトが残した一言を思い返し、仮面の男はゆるゆると口角を吊り上げた。それきり口を閉ざす。ズズズ…と空間に呑まれ消えゆく相手の後を、ゼツは慌てて追った。
最後に仮面の男が呟いた言葉に気づかずに。
「俺とアイツは『同じ』だからな」
陰鬱な印象を受ける森。人の気配が完全に消えた今でも、木々はなぜかざわめいている。
それはまるで、ナルトが言い残した言葉に怯え惑うように。
砂丘に吹き荒れる風が、やがて嵐に変わりゆく。
再び砂嵐に見舞われた砂漠へ、月が光を惜しみなく降り注いだ。
其処にあるのは月下にて吹き曝す、不毛な砂地のみ。
「―――うちはイタチは…俺が消す――――」
月の砂漠で告げられた言葉は、もう誰の耳にも届かない。
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