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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十三話 暗部
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きません。それに文句を言いそうな貴族達は叩き潰しました』
「確かにそうですが……」
また総司令官代理が笑った。

『ブラウンシュバイク公もリッテンハイム侯も内心では劣悪遺伝子排除法を疎ましく思っている筈です』
「それは如何いうわけでしょう?」
『ゴールデンバウムの血は弱体化しているのです。子が生まれない、特に男子が生まれない。帝国が後継者問題で揺れたのもそれが原因です』

なるほど、ブラウンシュバイク公もリッテンハイム侯もそれぞれ娘が一人しかいない。生殖能力が衰えているという事か。遺伝子的には弱者と評価せざるを得ないな。劣悪遺伝子と判断されてもおかしくは無い。ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯にそれを説けば廃法にする事は可能だと総司令官代理は考えている……。

帝国が劣悪遺伝子排除法を廃法にすれば影響は確かに大きい。有名無実とはいえルドルフが創った法なのだ。そして銀河帝国が暴虐と非難される根拠の一つでもある。共和主義者を弾圧し人類が帝国と同盟に二分される遠因にもなった。それが廃法になる……。帝国での影響は小さいかもしれない、しかし同盟に対するインパクトは大きい。改革も行うとなれば主戦派も帝国を暴虐とは非難し辛い。

『まあヘルクスハイマーの事も有りますしね。あの二人も嫌とは言わないでしょう』
ヘルクスハイマー? 総司令官代理の顔を見たがそれ以上は何も言わない、謎めいた笑みを浮かべている。俺が知る必要はないという事か? 或いはレムシャイド伯にそれとなく伝えろという事か……。どちらもありそうだな。

『ところで例の人達は如何しています?』
「一番慌てているのは彼らかもしれません。予定が狂った、そんな感じですな。今日も会合を開いているようです」
『どう出るかな。……動くか、それとも諦めるか……』
総司令官代理が笑みを浮かべて俺を見ている。

「諦めるというのは無いでしょう。彼らにとっては最も動き易い状況下にあります。問題は準備が間に合うか、だと思いますね」
『粗雑になってくれれば良いのですがね。そのために全艦隊に通信の封鎖を命じたのですから』
「なるほど」
敵は貴族連合軍だけではない、そこまで見越しての通信封鎖か……。

『シトレ元帥は何と言っていますか?』
「閣下の事を悪知恵の働く奴だと褒めています」
総司令官代理が苦笑を浮かべた。
『真の悪人は別にいますけどね、目立たないように隠れている』
誰の事だろう、シトレ元帥? 或いは俺か。

『タイミングを間違えないでくれと伝えてください』
「承知しました。ところで劣悪遺伝子排除法の件は如何しますか?」
『それも元帥に伝えてください。トリューニヒト議長にはシトレ元帥から伝えてもらいましょう。レムシャイド伯に伝えるのはその後で』
「はっ」


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