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自由惑星同盟最高評議会議長ホアン・ルイ
第十二話
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今だ衝撃が抜けきっていない議場を見渡し、ヤンは質問がないか尋ねた。

 同盟軍は惑星ウルヴァシーの補給基地を完全に破壊し後、同星系から離脱。途中、ビューフォート准将率いる新しく編成が終了した小規模な艦隊と合流。その後数千隻の小集団に分かれそれぞれフェザーンへと向かうことになる。
 帝国軍本隊がウルヴァシーから撤退した同盟軍本隊の行方を知ったのは同盟本隊が今まさにフェザーン回廊に入ろうとしていた時だった。

 

 同盟軍がフェザーン回廊に入る1日前、ヤンの元にシェーンコップが訪ねてきた。シェーンコップがこうしてヤンに話をしに来るのはそう珍しいことではない。
「私と提督が始めて会ったイゼルローン攻略戦の前、提督は私に言った言葉を覚えておいてですかね?」
「……確か要塞が攻略した後に退役すると言った気がするが」
 それを聞いたシェーンコップはきょとんとしその後笑い出した。それに対しヤンは憮然とし言い返した。
「私は何かおかしなことを言ったかい?」
「いえ、いや私は先ほどの作戦を聞いた時あなたの人が変わったのかと思いましたがそんなことはなかったと思い知らされたと言うだけです」
「変わったと思ったのか」
「ええ。イゼルローンの件にしても、次のフェザーンにしろ民間人に少なからずいえ多大な被害が及ぶことは提督もご存知でしょう?」
 イゼルローンは民間人ごと要塞を爆破、フェザーンでは同盟軍の侵攻にあわせてフェザーンの民間人を焚きつけ暴動を起こさせるなど褒められたことではない。
「ああもちろんわかった上で命令したよ」
「私が最初提督に聞いたのは数十年の平和が欲しい、ユリアンが戦場に引き出されるのを見たくないからのところですよ」
「なるほどね」
 ヤンは居心地が悪そうにベレー帽を行儀悪く指先でまわした。
「確かあの時もあなたはベレー帽を指先でまわしていたと思いますよ」
 ヤンは無言でベレーを頭に載せた。
「それで、何のようだったんだ?」
「いえ、いろいろつれまわされた挙句、任務が張り合いのないものなので少しばかり愚痴をと思っただけです」
 シェーンコップはそれではと席を立ち部屋を出て行った。
 一人になった部屋でヤンは一人つぶやく。
「……変わったのかもしれないな。けれどもしもの時はユリアンやフレデリカがとめてくれるかな?」
 ユリアンなら間違いなくやってくれるはずだ。もしくはキャゼルヌ先輩。アッテンボローは当てにならない。ヤンはそう考えた。
「ユリアンは元気にやってるだろうか?」
 彼の手元にはまだ、努力のあとが顕著なあまりおいしくない紅茶しかない。
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