1-2それぞれの思惑
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中に響いたんじゃないかと思う程にも聞こえた。その直後響いた余韻を遮るように背後から返答される。
「うるさいんだよ!」
「いって!」
背後から声と同時にやってくる後頭部への衝撃に苦痛の声を上げると、後頭部を両手で抑える。痛みはすぐに消えたが怒りはそう簡単に消えたりはしない。一つ文句を言ってやろうと振り返る。
「テメェ急に殴ってんじゃねぇぞ!」
「ギャーギャー喚くアンタが悪い」
後ろに立っていたのはカインの唯一の協力者であるミールという名の女性魔術師。肩まで伸びてる金髪は風に揺れており、翡翠色の瞳はこちらを射抜くようで反論の余地は無いことを示されていた。
「はぁ…さっさと行くよ」
手を正面に突き出すと、空間が歪み人が入れる程の大きさで造られる。彼女は空間系の魔術を使うエキスパートであり、空間系の魔術は使える人口が一番少なく、空間系の魔術は使えるだけ大きな才能の持ち主と言える。そして彼女はその中でもずば抜けた素質の持ち主で、上級者でも存在する場所から存在する場所へ転移することは出来るが、彼女の場合は自分で新たな空間を創造し、そこに転移することも出来る。二人は歪みに進んでいった。
転移した先には上も下も横も真っ白な何もない世界が現れる。ミールは掌を上に向けると、天井の空間が歪みパイプ椅子が一つ落ちてくると、見事にキャッチしパイプ椅子に腰を掛ける。俺も椅子を要求しようと言葉を発しようとするが頭上からの衝撃に言葉は出ず、落ちてきたものを見るとパイプ椅子だ。ミールを睨み付けるが
「ごめん、手が滑った」
「手が滑ったってのは随分と便利な言葉だな!?全然手なんざ滑ってねーじゃねぇか!」
悪態を吐くとカインもパイプ椅子に腰を掛ける。
「で、今回の襲撃はどうだったの?」
ミールは手元の空間を少し歪ませると、手を突っ込み最近流行りのお菓子を“どこからか”取って食べていた。
「また盗ってんのか?」
「ちょっ!盗ってるとは何よ盗ってるとは!」
実は彼女も歴とした犯罪者の一人であり、カインと同じS級反乱者で通り名は金色の悪霊。首に掛かってる金額もカインとほぼ変わらない。
「まぁいいや、襲撃の方は上手くいったけど無傷ってわけにはいかなかったな」
カインは怪我した腹部を手で擦っていた。ちゃんと治療したので完治まではそこまで掛からないそうだ。興味が無いのか、ふーんと適当な返事を返すと歪んだ空間からは携帯電話を取り出す。
「今度は最新の携帯かよ」
カイン自身は呟く程度に言ったつもりなのだが
「これは正真正銘私のです」
「(じゃあ今までのは盗ってたのか)」
この言葉は決して口には出すことはなかったが、そういうことなんだなと心の中で納得した。
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